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診療科のご案内

胆道疾患 / 膵臓疾患 / 大腸癌

診療内容

胆道疾患

  • 胆道癌

    肝臓でつくられた胆汁を十二指腸まで運ぶ管を胆管といい、十二指腸への出口を十二指腸乳頭部、胆汁を濃縮して一時的に貯めておく袋を胆嚢といいます。これら胆汁の流れ道を胆道といいます。

    胆道癌には肝臓の出口付近の肝門部領域胆管癌、遠位胆管癌、胆嚢癌、十二指腸乳頭部癌が含まれます。

    胆道癌は初期には特に目立った症状がなく、進行して胆汁の流れが障害されて黄疸をきたした状態で受診することが多く、まずは黄疸を減らす処置を必要とすることが多いです。

    胆管の周囲には肝動脈や門脈といった肝臓に流入する血管があり、一部は膵臓内を通るという解剖学的な特徴から、癌の発生した部位によって肝切除や膵切除を組み合わせた術式が選択されます。

    胆道癌に対して肝切除が必要になる場合は、肝臓の約半分を切除することが多いため、術後肝不全を予防するために術前門脈塞栓術を必要に応じて行い手術の安全性を上げています。膵臓側の胆道癌の場合は、膵臓の半分と十二指腸を切除する手術になります。どちらの場合も、門脈や動脈といった血管に浸潤しやすく、血管合併切除再建を必要とすることもあり大きな手術になりますが、手術で全て切除することが唯一根治への可能性があるため、切除可能と考えられる症例は積極的に手術を行っています。

    初診時に切除不可能と考えられる症例に対しては抗癌剤治療を行い、癌が縮小して切除可能となった時点で手術を行っています。

    胆道癌は進行癌で発見されることが多いため、胃癌や大腸癌などと比べると予後は不良です。全国胆道癌登録によると5年生存率は手術ができた症例でも胆管癌で約30%台、十二指腸乳頭部癌は胆管癌と比べるとやや良好で約50%となっています。

    当院での遠位胆管癌と十二指腸乳頭部癌の切除症例は約3 / 4がステージⅢ以上とかなり進行した症例が多かったですが、5年生存率はそれぞれ35.7%、63.6%と遜色のない結果を示しています。

    手術不可能な場合は黄疸をとるためのステントや抗癌剤治療を行い、できるだけ通常の生活が送れるようにいたします。

    【術前門脈塞栓術】
    肝臓を大きく切除する場合、残った肝臓が小さいと術後肝不全の危険性があります。この危険性を出来るだけ少なくするために、手術の前に切除側の肝臓内の門脈を詰めて2、3週間待つことで、切除側の肝臓を委縮させて残る側の肝臓を肥大させておく処置をいいます。

  • 胆石症

    胆嚢結石の約半数は無症状です。無症状の胆嚢結石は治療の必要はありませんが、以下の場合は手術を勧めます。

    ①胆石による症状が出た場合、②画像上、胆嚢癌の発見が困難なとき(慢性胆嚢炎で委縮胆嚢な 場合、胆嚢壁の観察が検査で判別が困難な場合)

    胆石発作を起こした場合、約半数が1年以内に再発をきたし、10年間で7割が発作を繰り返すといわれています。

    胆嚢結石症の治療には胆石溶解療法や手術がありますが、胆石溶解療法の効果は限定的で、治療の原則は手術による胆嚢切除です。

    【胆石症に対する手術】
    特別な理由のない限りは、ほぼ全例に腹腔鏡下胆嚢摘出術を行っています。現在まで1000例以上に対して施行し、約95%に腹腔鏡下胆嚢摘出術が施行されています。

    標準的な腹腔鏡下胆嚢摘出術は腹部に4個の孔(あな)をあけて、そこからカメラや鉗子を挿入して行いますが、当院では症例によってはおへそに開けた1つの孔だけで行う単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術を導入しています。この方法は美容的に優れた方法ですが難易度が増すため、安全性を重視しておもに炎症の殆どない症例に行っています。

膵臓疾患

膵臓を切除する対象となる疾患は、膵臓癌だけではありません。

当院では膵のう胞性腫瘍、膵神経内分泌腫瘍などにも、根治性の高い膵臓手術を提供しています。膵腫瘍の精査では消化器内科と連携して、積極的に造影CTや核磁気共鳴(MRI)、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)、内視鏡的超音波検査(EUS)を行っています。

内科、外科、放射線科、病理部と連携し腫瘍カンファレンスを開くことで、可能な限り正確な診断を行い、適切な治療方針を決定しております。根治性が得られる可能性が高いと判断されれば、当科では以下のような手術治療をお勧めしています。

十二指腸に近い膵頭部にできた膵臓癌に対する標準的な手術は膵頭十二指腸切除術です。

この手術では、膵頭部と十二指腸、胆嚢・胆管に加え胃の出口(幽門輪)側の1 / 3~1 / 2をまとめて切除します。当院ではできるだけ胃を温存するため、幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(胃をすべて温存)や、亜全胃温存膵頭十二指腸切除(胃の幽門輪のみを切除)を積極的に採用し、機能温存に努めた手術を行っています。

膵臓の中央から尾側にできた膵癌や膵のう胞性腫瘍に対する標準術式は膵体尾部切除です。この手術では膵の中央から尾側を切除するだけでなく、脾臓も合併して切除します。根治性が得られる範囲内で、脾臓の機能温存手術も行っています。

膵癌は発見された時点で進行している場合が多く、転移が認められない状態でも、膵臓に近い血管である門脈や動脈に腫瘍の浸潤を疑う場合があり、これをボーダーラインリゼクタブル膵癌(Borderline resectable膵癌)と言います。潜在的に転移をしている可能性が高く、手術治療のみでの根治性は乏しいため、全身状態が安定していれば化学療法を用い、縮小・改善が得られた場合に、血管合併切除を併せた膵臓手術を検討します。(膵癌治療ガイドライン2016)

膵臓手術は大手術に分類されるため、当院では外科治療を受ける際に外来にて、ご家族も含め治療内容、その合併症の危険性や後遺症を説明させて頂いています。ご理解を得たうえで入院して頂き、満足度の高い治療を提供できるようにしています。

転移などにより手術ができない膵悪性腫瘍に対しては抗癌剤と放射線を併用する化学放射線療法や抗癌剤単独での全身化学療法を行います。

また膵癌による胆管狭窄(黄疸)に対しては消化器内科にて内視鏡的ステント留置術(チューブステント、メタリックステント)を、十二指腸狭窄に対しては内視鏡的に十二指腸ステント留置術(メタリックステント)もしくは外科的にバイパス術を行い患者さんのQOL維持に努めております。

大腸癌

大腸は、右下腹部から時計回りに小腸を取り囲むように存在する全長約1.5~2mの管状の臓器で結腸と直腸の2つに分けられます。大腸は腸の内容物から水分を吸収して固形の便にし、肛門から排泄する役割を担っています。

大腸癌は大腸の粘膜の表面から発生し、次第に深く侵入していきます。進行するにつれ、リンパ管に入り込んでリンパ節転移を起こしたり、血管に入り込んで肝転移や肺転移などの遠隔転移を起こします。リンパ節転移は手術で完全に取り除けることがほとんどです。

また、肝転移や肺転移は遠隔転移ですが、手術で完全に取り除ける場合がしばしばあります。肝転移は当科で手術可能です。肺転移の手術が必要な場合は呼吸器外科のある病院に紹介させていただいています。

大腸癌は近年急激に増加しており、2006年の統計では、日本全体で肺癌・胃癌に次いで3番目に大腸癌で亡くなられている方が多く、男性では肺癌、胃癌、肝臓癌に次いで第4位、女性では胃癌よりも多く第1位となっています。大腸癌は元々日本人には少なかったのですが、食生活が肉食中心の欧米型になったことが、大腸癌の増加の原因と考えられています。

大腸癌の症状として多く認められるのは、血便、便通異常(便秘や下痢)、腹痛、腹部膨満、貧血などですが、血便は直腸がんやS状結腸癌の症状として非常に頻度の高い重要なもので、痔核の症状に似ていますので要注意です。便に混じった微量の血液を検出する便潜血検査は、大腸癌の早期発見のために健康診断でも広く行われています。

大腸内視鏡検査によって発見される小さな大腸癌が増えてきています。大腸内視鏡は病巣を直接観察でき、病巣が発見されたら、生検という小さな組織を採取する方法によって、癌の有無を調べることができます。当院では多くの内視鏡検査を行っています。早期の癌で、内視鏡で切除できる可能性のある病巣に対しては、拡大内視鏡、超音波内視鏡検査で病巣の深さを調べることがあります。

また最近当院ではバーチャルコロノスコピーという、下剤で前処置を行い大腸の中をきれいにした後、CTで大腸の中を内視鏡と同じように画像診断できる方法を、苦痛のない検査法であり行っています。ただしこの検査の場合生検(組織を採取する検査)は行えません。

内視鏡で切除できない癌の場合には、病巣の広がりや転移の状況を調べる検査が必要になります。肺肝転移の有無は普通、造影剤を点滴しながらのCT検査で調べますが、造影剤アレルギーのある方では、代わりに造影剤を使わない単純CT、腹部超音波検査や肝臓のMRI検査を行う場合があります。病巣の局所での広がりや、リンパ節転移の状況もCT検査で調べます。

また症例により近医を紹介させていただき全身の病巣の広がりを調べるPET検査を受けていただくこともできます。

【大腸癌の治療】
早期の大腸癌の中には、内視鏡切除で治療が完了する病巣も多く、当院でも内科と連携して早期癌にたいして内視鏡切除を行っています。

外科手術の方法には、通常の開腹手術と腹腔鏡下手術、経肛門的な局所切除術の3つの方法があります。このうち、局所切除術は肛門近くに発生した直腸癌でリンパ節転移の危険性がないものに対して、内視鏡切除と同様に癌病巣のみを切除する手術です。一方、開腹切除術や腹腔鏡下手術では、癌病巣と一緒に腸の一部、転移を起こしやすいリンパ節を一緒に切除するのが普通です。

【大腸癌の腹腔鏡下手術】
腹腔鏡下手術とは、腹部に約1cm程度の穴を何ヶ所かあけ、そのうちの一つの穴より、腹腔鏡というテレビカメラを腹腔内に入れ、テレビモニター画面を見ながらおこなう手術です。

腹部を大きく切開しないために、術後の疼痛が少なく、一般の開腹手術より術後の胃腸の動きの回復も早いため、食事も早期より食べることができ、入院期間も短くなります。また、傷が小さいことで、術後の癒着も少なく腸閉塞を起こしにくいという利点があります。

一方、直接、お腹の中を手で触れることができないために、より慎重な手術操作が必要となり、その結果、開腹手術に比べ手術時間が長い傾向があります。

当科では、①胆嚢結石症に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術、②胃癌、胃粘膜下腫瘍に対する腹腔鏡(補助)下胃切除、胃部分切除、③大腸癌、大腸腫瘍に対する腹腔鏡(補助)下大腸切除、等を施行しており、胆嚢摘出術後4日、胃切除、大腸切除術後9~14日で退院されています。

当科では2003年より腹腔鏡下大腸切除術をはじめ、その後症例数は増加しており、2015年では大腸がん97例中86例に腹腔鏡下手術を行っています。

直腸癌、特に肛門に近い部位に発生し従来は永久の人工肛門となっていた直腸がんに対しても肛門を温存する手術(トピックス(肛門温存手術))、術後の排尿機能障害や男性性機能障害を軽くするために自律神経を温存する手術を行っています。

ただし肛門に近い直腸癌の場合は癌の切除と同時に一時的な人工肛門を造設し、3~6ヶ月後を目安に閉鎖することがあります。人工肛門閉鎖後は元の自然肛門から排便が可能となります。

また再発を予防しつつ機能温存手術の適応をひろげるために手術前の化学放射線療法、子宮、前立腺、膀胱などに直接的に浸潤した場合の拡大手術なども行うことがあります。

大腸癌の根治手術を受けたあとは定期検査のための通院が必要になります。採血は3カ月に1回程度行います。

胸腹部のCTは、肺肝、局所転移再発を早期に診断することを目的としており、年に2~3回程度行われます。腹部超音波検査で代用する場合もあります。また必要があれば近医を紹介させていただきPET検査を受けていただくこともできます。

内視鏡検査は術後1年目、3年目、5年目を目安に行い、局所再発、新たな癌、ポリープの発見に努め、必要があれば入院で内視鏡切除を行います。

5年間再発がなければそれ以降はほとんど再発することはありません。

【大腸癌の再発治療】
大腸癌の再発のなかで最も多いのは肝再発です。肝転移以外では肺転移がときに発生します。 これらの初期段階では症状がないことがほとんどでCT等の定期検査で診断されることが多いです。

肝転移や肺転移、局所再発では、再度の外科的切除で癌病巣全部を取り除ける場合には外科的切除が第一選択の治療となります。外科的切除が不可能な再発病巣に対しては抗癌剤を用いての全身化学療法を行います。

また、外科的切除が不可能な局所再発に対しては放射線照射、または抗癌剤を併用しての放射線照射が有効である場合が少なくありません。当院では化学療法、放射線照射を積極的に行っています。