緊急情報
ホーム > しごと・産業 > しごと・産業・企業立地 > 農林業 > 地産地消の取組み > 小中学校給食での地場農産物の利用について > 生産者出張授業資料(コマツナ)
更新日:2023年1月6日
ここから本文です。
生産者による出張授業は、地産地消の取り組みとして、「食」と「農」に対する理解と関心を深めるために平成18年度より実施しています。 |
コマツナはアブラナ科の野菜で、野沢菜やからし菜などが含まれるツケナ類の1種です。江戸時代、東京都江戸川区にある小松川付近で栽培されていたものを、将軍に献上された際に、地名から「小松菜」という名前が付けられたといわれています。旬は冬で、霜や急な冷え込みに耐えるため、栄養を蓄えるのでおいしくなるといわれます。
|
千葉市(当時は千葉郡)では明治の末期に栽培面積を広げ、大正5年には県内2番目の産地となりました。昭和に入ると、早生系、中生系、晩生系と品種が増えて、収穫時期が10月から5月まで広がりました。最近は、品種の改良やビニールハウスの使用などの技術の発展により年間を通して収穫できるようになっています。平成26年産出額では千葉県は全国6番目で、千葉市は県内1番目の産地となっています。主な産地は、緑区、花見川区です。
コマツナは、ビタミンはもちろんのこと、カルシウムや鉄分といったミネラルを多く含んでいます。似たような使い方をされるホウレンソウと比べると、アクが少なく、シャキシャキとした触感が残りやすいという使い勝手の良さとおひたしや炒め物など用途の多さから、給食での利用が増えてきています。
コマツナのタネは非常に小さな粒状になっています。そのままだと扱いづらいため赤や青などの色がついたコーティングがされています。鳥や動物などに食べられにくいような工夫にもなっています。このコーティングは、土の中で水を吸うと肥料となるので、成長の助けにもなっています。【写真1】のタネは「なかまち」という品種ですが、コマツナには300種類以上の品種があります。品種によって、収穫できる量、生長スピード、病気などへの耐性、葉っぱや茎の形、大きさ、硬さなどに違いがあります。農家は、タネをまく時期や収穫時期、畑の環境に合わせて選んでいます。 |
【写真1】コマツナのタネ |
コマツナが大きく育ちやすくするために、【写真2-1】のように、土をトラクターで掘って柔らかくします。その後、肥料をまきます。肥料は、コマツナが育つための栄養になります。人間の食事と同じで、成分が偏っているとうまく育たないので、土の健康診断をしてまく肥料を決めることもあります。肥料は、【写真2-2】のような背負うタイプの機械やトラクターを使って広い畑にまくこともあります。また、ただまくだけでは偏りが出てしまうので、もう一度トラクターで肥料と土をよく混ぜ合わせて、土を軟らかくします。このような作業を「畑を作る」といいます。タネをまく前にしっかりこの作業をすることで、大きくて立派なコマツナを作ることができるのです。 | |
【写真2-1】土を耕すトラクター |
【写真2-2】肥料をまく |
タネまきは【写真3】のような機械を使います。この機械は、前輪が「溝を掘る」、中央部で「タネをまく」、中央部と後輪の間に“く”の字の歯があり「タネに土をかける」、後輪が「土をおさえる」という作業を一台でしてくれます。これを使うことで作業の簡略化だけでなく、まっすぐで均等にタネをまくことができます。 |
【写真3】タネまき機 |
コマツナは蝶や蛾などの虫や鳥たちに狙われやすい植物です。そんな天敵からコマツナを守るため、畑の上にあみを掛ける「トンネル」というものを作ります。【写真4-1】は土台となる鉄の棒を指しているところです。【写真4-2】は網をかけているところです。この網の網目は1mmより小さいので虫が入ってくることはありません。冬になり、寒くなるとビニールをかぶせて暖かくなるようにしたりします。 | |
【写真4-1】トンネルの枠作り |
【写真4-2】トンネルの網掛けの様子 |
タネをまいてから3~5日で発芽します。季節や天候によって変化しますが、寒くなると比較的遅くなります。【写真5-1】のようにハート型の双葉が出ます。 タネをまいてから10日ほどで【写真5-2】のように本葉が出てきます。こちらは普段見る葉に近い形の葉っぱです。 |
|
【写真5-1】タネまき後3日 |
【写真5-2】タネまき後10日 |
水はほとんどあげませんが、雨が降らず乾燥しているときは水をまくこともあります。夏であれば早い品種は20日程度で収穫できますが、冬は90日かかる場合もあります。ちなみにコマツナがたくさんできるのは、気温や湿度が安定する5月ごろと11月ごろです。【写真5-3】は10月にタネをまいて後45日程度たったものです。冬場や夏場でも気温と湿度を安定させるため【写真5-4】ビニールハウスを利用して育てていたりします。 |
|
【写真5-3】タネまき後45日 |
【写真5-4】ビニールハウス |
いよいよ収穫です。まずコマツナを根が付いたまま手で引き抜いて、小さな葉や折れた葉を取り除きます。出荷先に合わせて決まった重さに束ねます。【写真6-1】のように束ねるまでの作業をすべて畑で行っています。 収穫したコマツナの根には払っても土が残ってしまいます。きれいな白い根にするために【写真6-2】のような機械を使います。これはローラー状のブラシが上下で回っていて、間にコマツナの根を入れることで洗浄します。 |
|
【写真6-1】収穫したコマツナを束ねる様子 |
【写真6-2】根を洗う様子 |
コマツナは常温で置いておくとすぐにしなびて、元気がなくなってしまいます。そこで鮮度を維持するため冷たい水に2~3秒浸けます。【写真6-3】のようにすることで、全体が締まり、シャキッとした触感が維持できます。また、洗浄後すぐに7度に冷やした冷蔵庫に一晩入れて、冬眠させたような状態にして鮮度を保ちやすくします。これを予冷といいます。 |
|
【写真6-3】仕上げの洗いの様子 |
【写真6-4】予冷庫 |
1箱に20束ずつ入れていきます。1日の出荷分が箱に詰め終わったら、農協の集荷場へ運びます。集荷場へは近隣の農家からコマツナ以外にもいろいろな野菜を持ってきます。 |
|
【写真7-1】箱詰めの様子 |
【写真7-2】出荷場へ運び入れる様子 |
ここまでが、農家の仕事になります。みんながおいしいコマツナを食べられるように、毎日、耕して、種をまいて、育てて、収穫しています。
このように農家はたくさんの仕事があるので、遠い市場まで商品を持っていくのはとても大変です。そこで農協は集荷場に集められた野菜たちを鮮度の維持しながら市場へ運ぶという仕事をしています。野菜は形や大きさなどで分けられた「等級」によって市場で売られる値段が変わっています。その等級の確認も農協が行っています。他にも農家が使うタネや肥料、トンネルを作る棒や網、トラクターなどの農業に必要な道具の販売なども行っています。 |
【写真8】農協の役割 |
コマツナは集められてからトラックに乗せるまでの間も、集荷場にある冷蔵庫に入れられ、暑い時期はトラックも冷蔵設備のついたもので運ばれます。市場に運ばれた野菜は市場で働く卸売業者が納品先(八百屋や仲卸売業者)ごとに仕分けます。仕分けられた野菜を八百屋や仲卸売業者が学校やスーパーに運んで行きます。学校では調理師さんが給食を作ってくれて、みんなの口においしい野菜が届きます。 | |
【写真9-1】集荷場の予冷庫 |
【写真9-2】トラック |
【写真9-3】千葉市地方卸売市場 |
【写真9-4】仕分けられたコマツナ |
このように畑で作られた野菜がみんなの口に届くまでには、農家などたくさんの人の力と努力が関わっています。そういった背景もたまに思い出しながら、給食をおいしく残さず食べてください。
資料作成:千葉市経済農政局農政部農政課
協力:JA千葉みらい千葉東部地区出荷組合連合会葉物部会
参考文献:「千葉県野菜園芸発達史」 昭和60年千葉県発行
このページの本文エリアは、クリエイティブ・コモンズ表示-非営利-継承2.1日本ライセンスの下、オープンデータとして提供されています。
このページの情報発信元
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください