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更新日:2015年12月8日

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平成25年度心の輪を広げる体験作文 高校生・一般部門最優秀賞受賞作品

心の輪を広げる体験作文

千葉市最優秀賞受賞 作品

 

【高校生・一般部門】

「居住地交流の成果」

佐々木 あづさ

(一般)

 

六月二十五日、居住地交流で地元の小学校に行きました。居住地交流というのは、特別支援学校に通う児童が、住んでいる地域の学校を訪れて、学習に参加したり交流をしたりするものです。

私の長男・元基(げんき)は生まれつきの重度障害児で、特別支援学校の小学四年生です。居住地交流は二年生から希望することができ、元基も毎年申し込みをしていました。けれど、体調がなかなか整わず、やっと三年目にして希望がかないました。

同じ地域に住む子たちに元基を知ってもらいたい。特に昨年からは、二歳下の妹が地元小学校に通うようになったため、妹の担任の先生方にも元基と会ってほしいという気持ちがありました。車いすの移動や健康管理などの問題から外出の難しい息子ですが、家に閉じこもってしまうことのないよう、親の私が外に出ていこうとする姿勢を周囲にアピールしたいというねらいもありました。

当日は息子の担任の先生が一人付き添ってくださることになり、地元小学校に現地集合しました。前日に発熱があって中止を心配していたのですが、何とか体調が落ち着いて一安心。到着後は地元小学校の先生方にも協力していただき、車いすを階段で三階まで運びました。重い車いすは二人掛かりで、抱っこ移動の本人は私が抱え、医療ケア用の器械バッグと着替え・おむつの詰まったカバンを持ってくださる先生と、集まってくる子どもたちを整理する先生もいて、総勢六、七人での大移動です。特別支援学校に設置されたエレベーターのありがたさを実感しました。

三時間目、元基と同じ学年の二組の音楽授業に参加させてもらう予定で、休み時間のうちに音楽室に行きました。すでに十五人くらいの子どもたちが教室にいて、恥ずかしそうに、けれどこちらが気になって仕方ないといった様子で一カ所に固まっています。「授業の前に、いる人だけ先に自己紹介しましょう」と先生が声を掛けてくださり、元基の車いすを子どもたちがぐるりと囲みました。「元基は目が見えにくいから、手を触ってもらうとみんながいるのが分かるよ」と伝えると、順番に並んで一人ずつ名前を教えてくれながら握手。ほかにも、元基の鼻に入った長いチューブと、それにつながる器械について、「みんなみたいにご飯が食べられないから、ミルクに似た栄養剤を器械で流して、チューブでお腹に送っているの」といった説明もしました。

チャイムが鳴り、授業が始まります。子どもたちの混然とした歌声が、元基には新鮮だったようです。普段の音楽の授業では、歌うのは先生方が中心のため、明るくて楽しい雰囲気はあっても、子どもたちの合唱に感じる生命力というか、突き抜けた勢いはありません。いつもと違う環境が理解できずぼんやりとしていた元基の目が、辺りを積極的に探ろうとキョロキョロ動きました。うれしそうに口を開けているところを見ると、声の出せない元基がまるで一緒に歌いたがっているようで、胸が熱くなりました。

子どもたちが歌とリコーダーのパートに分かれて演奏をする際、音楽の先生がどちらのパートをやりたいか尋ねると、クラスの五分の四以上はリコーダーに手を上げました。先生がバランスをとるために歌への変更を促しても、リコーダー人気は変わりません。結局、リコーダー音が強めの曲が演奏されました。後で聞いたことでは、四年二組の担任の先生が前もって「元基くんは楽器の高い音が好き」といった話をしていてくださったとのこと。難聴気味の元基は、音の好き嫌いに敏感です。そうしたことを踏まえてリコーダーを選んでくれていたのだと分かり、子どもたちの素直な優しさに感動しました。

教室の窓から入ってくる初夏の風、プール活動をしている子たちのはしゃぎ声。エアコンで空調管理されている特別支援学校では、あまり感じることのない空気です。また、大勢の子どもが一人の先生に視線を集中させるのも、本来はこちらが普通の授業風景なのですが、特別支援学校に慣れた私には不思議な心地でした。元基のクラスは重い障害の子ばかりのため、五人の児童に三人の担任が付いて、始終手を掛けてくれています。恵まれた体制に、今一度気付くことができました。

夕方に帰宅した娘が、「知らない四年生のお姉ちゃんに『元基くんと音楽の授業をしたよ』って話し掛けられた」と教えてくれました。この一言で、私は居住地交流の成功を確信しました。娘がほかの子と元基の話をするきっかけを作りたいというのも、目標のひとつでした。障害児である兄の存在が、娘にとっての弱みになってほしくないと、いつも願っています。

後日、四年二組の先生から元基の担任に連絡がありました。国語の時間に作詩をしたとき、元基のことを書いた児童が何人かいたというのを知らせてくれるものでした。詩を読ませてもらうと、もう涙が止まらず、思わず元基を抱き締めてしまいました。中でも元基の握手の力が弱かったことを書いた文が印象的で、子どもたちの目を通した我が子の姿に、改めていとおしさを感じずにはいられませんでした。そして、元基という障害児に直接触れた子どもたちが、それぞれに何かしらを感じ取ってくれたことを喜ばしく思いました。

障害児と健常児が同じ教室で学ぶのは、双方にとって、とても豊かな経験になります。今回は一年目なので一回きりですが、来年以降は徐々に回数を増やしていけるそうなので、ぜひお願いしたいです。

お骨折りくださった二校の先生方、ご協力いただいた方々、心からありがとうございました。四年二組、元基のもう一つのクラスメイトたち、また会いましょう。


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