千葉市地震被害想定調査結果の概要(HTML版)
1.総論
(1)調査の目的
本調査は、国・千葉県の地震被害想定から得られた最新の科学的知見などを踏まえて、千葉市直下地震について、地震動(地震による揺れの大きさ)や液状化危険度、人的・物的被害を予測するとともに、市民生活への影響を調査し、本市の地域防災計画の見直し及び地震防災・減災対策の基礎資料とすることを目的とする。
(2)千葉市直下地震の被害想定調査に係る経緯
平成20年12月:千葉市調査(想定地震:東京湾北部地震(マグニチュード7.3))
平成25年12月:国調査(マグニチュード7クラスの複数の地震を想定)
※国は、東京湾北部地震を想定した領域について、大正関東地震によりすでにひずみが解放されたと推定されることから、首都地域のどこでも発生する可能性のあるマグニチュード7クラスの地震を防災・減災対策の対象とすることとした。
平成28年3月:千葉県調査(想定地震:千葉県北西部直下地震(マグニチュード7.3))
2.地震動
- 市全体の54%が震度6強、43%が震度6弱となる。
- 花見川区、稲毛区及び若葉区で、震度6強の範囲が6割を超える一方、中央区、緑区及び美浜区では、震度6弱・5強の範囲が6割を超える。これは、一般的には埋立地や低地の軟弱な地盤では、揺れが大きくなるが、千葉市直下地震のように、市域において非常に大きな揺れが発生する地震では、液状化現象などにより、中央区や美浜区において、逆に揺れが伝わりにくくなる現象が発生するためである。
3.液状化危険度
- 液状化危険度については、中央区、花見川区及び美浜区の埋立地・低地で液状化危険度の高い領域が広がっている。特に美浜区においては、5割近い範囲で液状化危険度が高くなっている。
4.建物被害
- 揺れによる建物被害では、中央区、花見川区及び若葉区においてそれぞれ約4,000棟前後の建物が全壊し、中でも花見川区において全壊棟数が最大となる。
- 液状化による建物被害では、液状化危険度の高い埋立地や低地がある中央区、花見川区及び美浜区において全壊棟数が多くなり、木造建物の多い中央区で全壊棟数が最も多くなる。
- 火災による建物被害では、火気の使用が多く、強風である冬18時、風速8m/秒のケースで、被害が最大となり、木造建物が多い中央区、花見川区及び稲毛区において被害が多くなる。
5.人的被害
- 死者数・重傷者数が最大となるケースは、自宅で寝ている時間帯である冬5時、風速8m/秒で、死者数が1,130人、重傷者数が1,870人となる。このケースで最も死者数・重傷者数が多いのは花見川区であり、死者数が280人、重傷者数が450人となる。
- 死者数が最大となる冬5時、風速8m/秒のケースについて要因別の内訳をみると、建物倒壊に伴うものが、1,130人中900人と最も多く、就寝時の時間帯であり避難行動が遅れることによる。
6.ライフライン被害
- 発災直後は、電気・電話が90%以上、上水道・都市ガスが60%以上使用できなくなる。
7.交通施設被害
- 緊急輸送道路の道路橋梁については、想定対象とした126か所の橋梁のうち、大規模損傷が11か所、中規模損傷が8か所発生する。
- 建物倒壊に伴う道路閉塞については、全市域の14%において、道路閉塞率(がれきなどにより車道幅員が3m未満となる道路区間の割合)が20%以上(道路交通が困難となる水準)となる。
- 鉄道については、発災直後は全ての区間が不通となる。復旧日数については、JR総武線及び京成千葉線が8日間と、最も復旧に時間を要する。
8.避難者数
- 避難所への避難者数については、1日後に最も多くなり、約18万人となる。
9.帰宅困難者数
- 市内の乗車人員数の多い主要駅について、最も帰宅困難者数が多くなる平日12時に地震が発生した場合の帰宅困難者数を予測した。
- JR・京成千葉駅では31,300人、JR海浜幕張駅では27,000人、JR稲毛駅では10,100人、JR蘇我駅では4,400人の鉄道利用の帰宅困難者が発生する。
10.その他の被害予測
- 震災廃棄物については、全市で約265万トン、約245万m3(東京ドーム2杯分)発生する。
- エレベータへの閉じ込めについては、市内の全エレベータ約5,000台のうち、約1,100台のエレベータで、閉じ込めにつながり得るエレベータ停止が発生する。
- 直接経済被害は、全市で約2.3兆円(建物被害約1兆800億円、家財被害約6,600億円等)となる。
11.建物の耐震化等による被害軽減効果の推計
- 住宅の耐震化率について、現状の86.2%(平成27年度末推計値)から、95%(第2次千葉市耐震改修促進計画の目標)まで上がった場合、揺れによる全壊棟数が17,140棟から8,000棟(減少率53%)に、建物倒壊等による死者数が1,030人から470人(減少率54%)に減少する。
- 家具転倒防止対策の実施率について、現状の18.8%(平成24年千葉市インターネットモニターアンケートを参考に設定)から、65%(千葉県地震防災戦略の目標)まで上がった場合、屋内収容物の転倒等による死者数(冬5時に発災した場合)が140人から60人(減少率57%)に減少する。
- 出火防止対策について、感震ブレーカー等が100%設置されて、電気出火が防止された場合には、焼失棟数及び死者数が約半分減少する。