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更新日:2024年4月10日

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校長室

「雪迎え」の話

校長 髙野 和久 

 

 

yukimukae この4月から校長として赴任しました髙野と申します。一年間どうかよろしくお願いします。

 蜘蛛が空を飛ぶ話を聞いてきましたので紹介させていただきます。最初は蜘蛛が空を飛ぶなんて、羽でも生えた蜘蛛がいるのかと思いましたがそうではありませんでした。

 12月の上旬、自身の生息範囲やなわばりを広げるために、蜘蛛たちは空を飛んでいくのだそうです。自身のおしりから糸を長くはきだし、その糸と共に、風に乗って、いっせいに空を飛ぶのだそうです。みなさんの中にはこのような蜘蛛の習性を見たことがある人はいませんか。

 日本では、一般的にこの現象を「飛行蜘蛛」と呼ぶそうですが、東北地方では古くから、空を飛ぶ蜘蛛を「雪迎え」と呼んでいるそうです。蜘蛛がいっせいに空に飛び立つ現象が東北地方に起こると、必ず決まって雪の季節が訪れるので、人々がいつのまにか「雪迎え」と呼ぶようになったのだそうです。しかし鳥が空を飛んだり、飛行機が空を飛ぶのとは違って、飛んでいく目標を定めることは当然できません。どこまでどのくらい飛べるかもわからない、すべてその瞬間の風まかせ、上昇気流まかせであるわけです。飛行蜘蛛を観察した方の話によると、多くは飛べても3mから5m。はきだした糸がからまり、まるまって落ちることも多い。万に一つの幸運が重なって、遠く遠く飛べたとしても、鳥や他の虫に食べられてしまうことも。

 それでも蜘蛛が飛ぼうとするのは一回だけではないそうです。失敗したらまたチャレンジをする。三回も四回も、繰り返し繰り返し・・・そして仮にそれほど遠くへ飛べなかったとしても、与えられた範囲内で懸命に生きていこうとする。

 この蜘蛛の習性を見た多くの人々は一様に「健気(けなげ)」という言葉を思い浮かべるのだそうです。「健気」なんと新鮮で、しかも力強い言葉でしょうか。前途有望で、若さあふれる皆さんに、私は「若者らしく、健気であれ」と言いたい。この蜘蛛たちのように無駄であるかもしれなくても、自身の可能性を信じてたくさんの糸をはきだしてもらいたいと願います。どんな力を一人一人が秘めているかわかりません。「失敗するかもしれない」とか「おそらくできないだろう」ということでなく「やればかならずできる」「もし転んでも、そこに転がっているものをつかんでやり直そう」という積極性や根性を持ってもらいたい。そんな思いを込めて「雪迎え」の話を紹介させてもらいました。一年間どうぞよろしくお願いします。