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更新日:2020年12月9日
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心の輪を広げる体験作文
中学生部門 最優秀作品
「Kくんと私たちのこれから」
髙橋 法穂
(千葉大学教育学部附属中学校 2学年)
春の学童保育には、たくさんの新小学一年生が入ってきます。その中に、Kくんはいました。私が小学三年生だった頃です。
Kくんは、他の一年生とは一風変わっていました。口の中に大きな飴を入れたまま話しているような、まどろこしい喋り方をするのです。そのため、聞き取れないことも多々ありました。一足す一は解るのに、一足す二になった途端答えられなくなったり、自分の意思が受け入れられないと泣いてしまったり・・・「不思議な子だなぁ」というのが正直な印象でした。
Kくんは変わった子でしたが、それ以上に素直で、とても懐いてくれました。いつも
「のりほちゃん、のりほちゃん!」
と、ぴかぴかの笑顔で駆け寄ってきてくれるのです。舌足らずではありますが、めいっぱいの言葉で話す姿はとてもほほえましいものでした。また、部屋の蛍光灯を突然消しては皆を驚かせ、先生に怒られてばかりだったKくん。やり方は不器用だけれど、本当は先生にかまってもらいたかっただけなのだと思います。誰よりも無邪気で、甘えん坊でした。
Kくんが自閉症だったと知ったのは、随分あとのことでした。他人と少し違うKくんでしたが、仲間外れにされているところは一度も見たことがありませんでした。Kくんは、学童の子どもたちの一人として、自然に馴染んでいたのです。「Kくんを取り巻く環境が、あたたかなものでよかった」、そう思わずにはいられませんでした。世の中の障がいを持つ人たちが、必ずしも平等な扱いを受けているとは限らないからです。差別を受けたりして、つらい思いをしている人もいるはずです。
障がいを持つ人たちがのびのびと暮らすために、私たちができること。それは、障がいに偏見を持たないことだ、と私は思います。
例えば、自閉症は“自ら”を“閉じる”症状、と書きます。その名前のせいで、自閉症に対して暗いイメージを持っている人もいるのではないでしょうか。しかし、Kくんは暗い子どもではありませんでした。むしろ、自分の内面をさらけ出し、明るい笑顔を振りまいていました。病名だけで人を判断することなど、できるわけがないのです。
学童を卒業してから四年が経ちました。私はもう中学生ですが、たまに、朝の通学路でKくんとすれ違います。Kくんは生まれたてのロケットのように、私の横を突き抜けていきます。Kくんのランドセルは昔よりずっと小さく、それを背負う背中はずっとたくましく見えました。
Kくん、そしてあらゆる障がいを持つ人々が、嫌な思いをせず生きていくために。まずは自分から偏見をなくし、障がいにそっと寄り添えるような人でありたいと思います。
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保健福祉局高齢障害部障害者自立支援課
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