更新日:2015年3月24日

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住宅政策審議会 第一次答申(平成9年3月28日)

平成9年3月28日

 

千葉市長 松井 旭 殿

 

千葉市住宅政策審議会
会長 服部 岑生

 

新たな時代を展望した千葉市の住宅政策の推進方策について
(第一次答申)

 

本審議会は、平成8年7月30日付8千建第197号を以て貴職から「新たな時代を展望した千葉市の住宅政策の推進方策について」の諮問がなされたことを受け、関連する事項について公的住宅検討委員会及び市場対策検討委員会の二つの専門委員会を設け、調査審議を行ってきた。

 

調査審議事項のうち市営住宅及び特定優良賃貸住宅の供給・管理施策のあり方並びに住宅関連情報の提供方策のあり方については、平成8年11月1日に両専門委員会により中間報告がとりまとめられた。

 

本答申は、当該中間報告にさらに検討を加え、市営住宅及び特定優良賃貸住宅の供給・管理並びに住宅関連情報の提供に関し、市として今後講ずべき施策の基本的方向をとりまとめたものであり、千葉市における住宅政策の推進に当たり、これらを十分参酌されることを希望する。

 

目次

第1 はじめに

第2 千葉市営住宅の供給・管理施策のあり方

第3 特定優良賃貸住宅の供給・管理施策のあり方

第4 住宅関連情報の提供方策のあり方

 

第1 はじめに

 

1 市営住宅を巡る状況

市営住宅制度は、従来から、住宅に困窮する低額所得者の居住の安定と居住水準の向上のために大きな役割を果たしてきた。しかし、世帯の小規模化(以下「小世帯化」という。)や人口の高齢化、高齢単身者世帯の増加等の変化に伴い多様化する市民ニーズに対応する観点から、新たな建設、建替えによる供給はもちろん、管理についても的確化を図る必要が生じてきている。
このため、今般、国において公営住宅法の抜本的な改正が行われたところであり、市営住宅制度についても所要の見直しを行う必要に迫られている。

 

2 特定優良賃貸住宅を巡る状況

千葉市においては、借家世帯の居住水準の向上を図るため、民間の土地所有者等による優良な賃貸住宅の供給を促進する特定優良賃貸住宅供給促進制度を平成5年度より推進してきた。
しかし、同制度を通じて供給された住宅は未だ少なく、民間市場の誘導効果が十分ではない。一方、収入超過者の受け入れ等公営住宅を補完する役割の強化や、定住人口の増進に向けた市外からの転入世帯の受入れなどが特定優良賃貸住宅に期待されている。

 

3 住宅関連情報を巡る状況

消費者と供給事業者が対等な条件の下で活発に取引を行う良好な住宅市場が形成されるためには、消費者が住宅の性能、品質、価格等に関する情報を適宜入手でき、合理的な判断を行えることが重要である。しかし、現実には消費者はこれらの情報を十分に入手できておらず、事業者側においても高度化・多様化する消費者ニーズへの対応が必ずしも十分に図られていない。
このため、公的機関が的確に住宅関連情報を提供し、消費者による情報収集活動や供給事業者による資質向上、体制整備等の取組みを支援することが期待されている。

 

以上のような状況を踏まえ、本答申においては、市営住宅、特定優良賃貸住宅及び住宅関連情報に関し、市として国庫補助事業の活用、関係公的機関及び民間団体との連携等を通じ、限られた財源の効率的な活用を図りつつ、今後講ずべき施策の方向について提言するものである。

 

第2 千葉市営住宅の供給・管理施策のあり方

 

1 市営住宅の現状

(1)供給を巡る現状

1)新築・建替えの状況

市営住宅は、昭和26年度から供給を開始し、平成8年4月1日現在、6,697戸を管理してきており、その構造も、木造、準耐火構造、中層耐火構造、高層耐火構造と多種にわたっている。
特に、昭和40年代までの住宅は、近年供給されているものに比べて、「狭隘な住宅」が殆どであり、併せて経年による老朽化も進んでいる。
人口の高齢化による投資余力の減少に先立ち、良質な市営住宅のストックの整備を推進することは極めて重要な課題であることから、千葉市においては、建設年度の古い木造団地から建替えに着手し、住環境の改善を図ると共に、新築事業と併せて供給戸数の増加に努めている。
しかし、市営住宅の新築や建替えに際しては、周辺住民との調整が難航する場合が多く、また建替えにおいては、家賃が従来家賃よりも上昇することなどへの不安から、特に高齢者世帯等の協力が得にくいという問題があり、事業の遅延の要因の一つとなっている。

2)新築供給の手法の現状

市営住宅の建設は、用地を購入し建設する直接供給方式により行なわれている。現在も、地価の状況により特に都心部での取得は困難な状況にあるものの、積極的な情報の収集、用地の取得が行われている。

(2)社会ニーズへの対応の必要性

1)長寿社会の到来への対応

住宅は自立し、豊かな生活を営むための基盤となるものであり、長寿社会の到来による人口の高齢化、小世帯化の進展に伴い、高齢者や障害者など社会的弱者の居住の安定を図ることが住宅政策上の重要な課題の一つとして取り上げられている。
この様な経済社会情勢の変化や収入超過者の明渡し等による適正入居を推進する必要性などを背景に、「真に住宅に困窮する所得の低い者へ的確に供給する」ことを主たる目的とした公営住宅法の改正がなされた。
さらに、当該改正では高齢者・障害者等に限り事業主体の裁量により、入居収入基準を引上げることが可能とされたところである。
一方、市営住宅入居者の高齢化、小世帯化、高齢単身者の増加状況は、市平均値を上回っており、高齢者を含む世帯が全入居世帯の25%弱を占め、さらに世帯人数も2人世帯以下が51%を占めるなど、その進行は顕著である。
エレベーターを有しない既存の階段室型住宅においては、高齢者の1階への住替要望が多いものの、1階に空き家が少ないことから要望に応じることが困難な状況にある。このため、階段室への手すりの取付けを行うなどの対策を講じているが、住替え先の確保が急務となっている。
また、老人世帯・障害者世帯に対しては、特定目的住宅として特別枠を設定し、募集・供給を行っているが、障害者向けとしての供給対象は車椅子使用者に限られており、その他の障害者は対象とされていない。

2)住まい方の多様化への対応

市営住宅は、主に4人家族の標準世帯を対象に計画・建設されてきたが、高齢化・小世帯化の進展により、高齢単身者や高齢夫婦世帯が増える一方、多世帯同居や親世帯・子世帯での近居・隣居形式による住まい方への要望も提起されている。このような多様な住まい方に応えるため、新築・建替えにおける型別供給や既存ストックの活用と共に、住替制度の見直しを検討しているが、管理業務の複雑化が課題となっている。

3)省エネルギー及び建設コスト低減への対応

環境問題については、地球的規模の課題として対応する必要性が指摘されており、住宅についても省資源・省エネルギー対策をはじめ環境共生に配慮したストックの形成の必要性が叫ばれている。
また、公共事業価格の低減などの課題についても対応が求められている。

(3)管理業務を巡る課題への対応の必要性

1)空き家の存在

市営住宅における空き家は、民間賃貸住宅における空き家率を大きく下回ってはいるものの、狭隘、老朽化、立地条件などを理由として発生しており、長期間空き家となっている住宅も存在している。
各空き家については、改修を行った上で年6回の募集が行われているが、その解消には至っていない。

2)収入超過者の存在

収入超過者は相当の割合で存在しており、割増料を加えても他の公的住宅や民間の賃貸住宅に比べて家賃が安価であること、また適当な移転先が少ないことから、明渡しの指導に従わない場合が多く、結果として、収入が少なく真に住宅に困窮している市民の入居を阻害する状況を生んでいる。

3)家賃滞納者の存在

家賃の滞納者も少なくなく、その滞納額は年々増加の傾向にある。
滞納者については、生計主の死亡など減免申請の対象となるようなケースを除いては、千葉市住宅供給公社及び市が納付指導を行っており、悪質なケースについては、法的措置を講じている。
しかし、この法的措置に係る事務量の関係から、年間の措置件数には限界があり、対象者すべてには対応されていない状況である。

 

2 講ずべき施策

 

(1)基本的な考え方

千葉市は、平成6年度に、住宅政策の基本目標となる「千葉市住宅マスタープラン=一人ひとりのゆたかさをひろげる住まいづくり=」を策定し、その推進に努めているが、経済社会情勢の変化やこれらを受けて行われた公営住宅法の改正などを踏まえ、マスタープランに掲げられた社会的弱者向け住宅の供給目標の達成については、特に努めていく必要がある。
このため、法本来の目的の達成に向けて、以下に掲げる施策の推進を通じ、真に住宅に困窮する者が主体性・自立性を確保しつつ、豊かな社会生活を営むことのできる「場」の整備に取組んでいく必要がある。
また、施策の推進にあたっては、高齢者や障害者への配慮はもとより、省資源・省エネルギーなど環境共生に配慮すると共に、可能な限り建設コストの低減に努めるよう基準を整備する必要がある。

 

(2)的確な供給の推進

1)既存ストックの有効活用の促進

木造・準耐火構造の老朽化した住宅にあっては、早急に建替えを行い、土地の有効活用を図ると共に住環境の整備、地域の防災化に努める必要がある。また、建替えに至らない住宅は、バリアフリー化・設備水準の向上など住戸改善をさらに促進すべきである。
なお、新築や建替えにおいては、周辺住民及び入居者に対し、住環境の整備、地域の防災化の必要性と共に市営住宅の必要性について理解を求めることが必要である。

2)新たな供給手法の検討

今般の公営住宅法の改正により可能となった民間住宅等の借上方式は、これまでの直接供給方式では対応できなかった地域への供給が期待できることや、災害時等の緊急を要する場合に有効な制度であると考えられることから、その導入について検討する必要がある。

3)長寿社会への地域的な対応の促進

市営住宅の計画に際しては、福祉施設の併設や周辺公共公益施設との連携を図るなど、地域全体としての長寿社会対応が促進されるような方策を検討する必要がある。

 

(3)社会的弱者への対策の推進

1)家賃制度等における高齢者・障害者等への配慮

高齢者・障害者世帯等では一般的に収入の大幅な伸びは期待できず、むしろ、減少する可能性が高いと考えられる。
従って、高齢者・障害者等の居住の安定が図られるよう、事業主体の裁量により引上げられる上限(収入分位で40%)まで入居収入基準を緩和する必要がある。
また、車椅子使用者以外の障害者についても対象とするなど、特定目的住宅の対象世帯の見直しを行う必要がある。

2)総合的なバリアフリー化の促進

人口の高齢化や高齢者等の居住の安定を図るための制度改正等の結果として、今後は入居者の高齢化が一層進展することが見込まれることから、加齢等に伴い、身体機能が低下しても支障なく住み続けられるよう、市営住宅の総合的なバリアフリー化を図っておくことが重要である。
このため、新築・建替えによる新規供給の住宅にあっては、エレベーターを設け、また、エレベーターの設置が困難な既存住宅にあっては、住戸内のバリアフリー化を中心に改善を行い、良質な住宅ストックの形成に努める必要がある。このことは、単に高齢化対応ということではなく、下階への住替え要望が減少することや空き家の減少が図れることなど、既存ストックの有効な活用に繋がるものであり、社会の要請に応えるものである。

3)多様な供給方法の検討

真に住宅に困窮する者へ的確に供給が図られるよう、既存の狭隘住宅にあっては、必要な改善を行い、高齢単身者の入居を促進すると共に、近居・隣居形式などの住まい方への対応や住替制度の拡充などについても検討する必要がある。
また、長寿社会の到来、家族構成の多様化など社会ニーズの変化に応えるため、型別供給はさらに促進すべきであり、その際のタイプ別供給量の設定について検討を進める必要がある。

 

(4)公平性の確保と適正管理の推進

1)収入超過者への対応

公営住宅法の改正により、収入超過者の家賃設定の方法及び高額所得者への明渡し請求の強化など収入超過者の退去を促進する仕組みが導入されたが、これに伴い、事業主体は、必要に応じて他の公的住宅への入居を容易にするよう努力することとされた。このため、特定優良賃貸住宅への入居に関し、優先枠を設けるなど、入居が容易となる方策を推進する必要がある。

2)家賃滞納者への対応

滞納者に対しては、滞納額が高額にならないうちに指導することが大切であることから、現行の指導・徴収業務を更に強化する必要がある。
また法的措置の適正な執行に向け、一層の工夫が望まれる。

3)長寿社会に対応した管理体制の整備

入居者の高齢化の進展に伴い、団地内における清掃や緑地の管理などの自主管理体制の維持が困難となるケースが生じるものと予測されるため、管理体制の強化や業務の委託化などについて検討する必要がある。

 

第3 特定優良賃貸住宅の供給・管理施策のあり方

 

1 千葉市の借家及び特定優良賃貸住宅に関する現状

 

(1)借家世帯の居住水準の現状

千葉市の居住水準は全体として向上しているものの、借家の1戸当たりの平均床面積は約44平方メートルに留まっており、借家世帯の約16%が最低居住水準未満世帯であるなど、持家に比較して居住水準の改善が立ち遅れている。
特に、借家への依存率が高い子育て世帯では住宅の広さ、設備等に関する不満が高くなっており、ライフステージに応じ良質な住宅を確保できるよう、そのような世帯の良質な借家への住替えを促進する必要がある。
しかし、平成元年以降に借家から借家へ住み替えた最低居住水準未満世帯は、約半数が住替え後も同水準未満に留まるなど、優良な賃貸住宅ストックの不足が住替えによる居住水準の向上を阻んでいる。
このため、特定優良賃貸住宅供給促進制度により優良な賃貸住宅の供給を誘導し、住替えを促進することが期待されているが、制度創設から日も浅いため、千葉市において供給された特定優良賃貸住宅は未だ少なく、平成9年1月1日現在管理を開始しているのは760戸と市場を誘導するには不十分である。さらに、現在は「市政だより」等により制度の概要及び事業者・入居者の募集について広報・宣伝を行っているが、周知不足のため、制度の活用が十分に図られていない。

 

(2)特定優良賃貸住宅供給促進制度の制度上の問題点

現在、市の制度上、管理主体として認められているのは、千葉市住宅供給公社(以下「公社」という。)と千葉県経済農業協同組合連合会のみであり、民間の管理会社は認められておらず、限られた管理方式の事業のみが対象となっている。
また、入居者負担額は管理開始日から1年経過するごとに5%ずつ上昇するため、空き家へ入居する世帯は、新築時に入居した世帯に比べて負担が重くなり、将来的に住替えが進まなくなるおそれがある。

 

(3)市外からの住替えの状況

平成5年の住宅統計調査によれば、平成元年以降に市外から千葉市内へ住み替えた世帯のうち約8割は借家に入居するなど、市外からの転入世帯の受皿として借家が重要な役割を果たしている。
優良な賃貸住宅へ市外から多くの世帯が転入することは、定住人口を増進させることが期待される。しかし、特定優良賃貸住宅の入居者を募集する際の市外への広報・宣伝としては、一部の住宅情報誌への掲載しか行っておらず、結果として、市外からの転入世帯の比率は約3割に留まっている。

 

(4)公営住宅との連携状況

公営住宅の適正入居を推進するため、平成8年に公営住宅法が改正され、収入超過者の明渡しを促す仕組みが導入された。
このような状況の下で特定優良賃貸住宅には、収入超過者の移転先としての役割が期待されている。しかし、平成9年1月1日現在、市内の特定優良賃貸住宅のストック数は、市内の公営住宅のストック数の約20分の1に留まっている。また、公営住宅が多数立地しているものの、特定優良賃貸住宅がほとんど存在しない地区があるなど、立地の偏りも見られる。

 

(5)社会ニーズを巡る状況

長寿社会への対応や環境との共生等社会ニーズの多様化及び高度化に伴い、住宅についても加齢等に伴う身体機能低下や省資源・省エネルギーへの対応などが求められている。
特定優良賃貸住宅の現行の建設基準においては、便所、浴室への手すり設置や屋根等の断熱化など一定のバリアフリー仕様及び省エネルギー仕様の採用を条件づけているが、制度を通じてどのような優良賃貸住宅ストックの誘導を図るべきかの基本方針及び具体的な要求水準が不明確であり、明確化が求められている。
ただし、建設費の補助は廊下、階段等の共用通行部分や緑地、駐車場等の共同施設部分に限り行われ、整備費全体に占める補助金の比率はそれほど大きくない。したがって、社会ニーズへの対応を求める余りに、過大な仕様を条件づけることは避ける必要がある。

 

2 講ずべき施策

 

(1)優良な賃貸住宅ストック形成の促進

特定優良賃貸住宅供給促進制度のより一層の推進を通じ、十分な数の優良な賃貸住宅ストックの形成を誘導する。
この場合において、近年の経済社会情勢の変化等を勘案し、補助を行う対象を借家需要が旺盛な地域に立地する物件に限っていくこと等により財源の効率的な活用を図っていく必要がある。
このため、補助対象とする団地の立地等に関する基準を策定し、公営住宅の収入超過者の受皿として、公社が直接整備する場合等特殊な事情がある場合を除き、当該基準への適合を条件づけることが望ましい。

 

(2)積極的な広報・宣伝等の推進

事業者及び需要者による特定優良賃貸住宅供給促進制度の活用を促すため、同制度の概要及び事業者募集について積極的に周知を図るとともに、管理主体による入居者募集に関して支援を行う必要がある。なお、民間の土地所有者等による制度の活用を促進するためには、農業団体等との連携を図っていくことが有効と考えられる。

 

(3)多様な管理方式への対応

民間指定法人による管理を早急に制度化し、多様な管理方式による整備を推進するなど、より多くの事業者及び需要者による制度の活用を可能とする。
なお、公社による一括借上方式は、事業者にとって空き家リスクが回避され、メリットが特に大きいが、民業圧迫とならぬよう民間管理会社との役割分担を明確化する必要がある。このため、今後は、借家需要が旺盛で優良な賃貸住宅ストックが特に不足している地域に立地し、原則として社会ニーズに先導的に対応している物件に限定して当該方式を適用することが望ましい。

 

(4)空き家への住替えの促進

空き家ストックへの住替えを促進し、ストックの有効活用を図る観点から、空き家へ住み替える世帯について、新築住戸への入居世帯と同様の家賃負担軽減措置の創設を検討する必要がある。
なお、家賃負担軽減措置の創設に当たっては、特定優良賃貸住宅としての管理が終了する時点における入居者負担額と市場家賃とのバランス等を考慮し、負担額の急激な増加を防ぐ必要がある。

 

(5)市外への積極的な広報・宣伝活動の推進

市外からの特定優良賃貸住宅への入居を促進して定住人口の増進を図るため、特定優良賃貸住宅供給促進制度により供給された優良な賃貸住宅について、管理主体が入居者募集を行う際に、市外向けに効果的な宣伝活動が行えるよう市として支援とする必要がある。

 

(6)収入超過者の受入れに向けた各種施策の展開

公営住宅ストックの立地等を勘案して、収入超過者の移転先として十分な特定優良賃貸住宅ストックの整備を推進するとともに、入居者募集の際に収入超過者について優先的に公募抽選を行う枠を設けることや特定優良賃貸住宅に関する情報を収入超過者に積極的に提供することなどを通じ、移転を誘導していく必要がある。
なお、公営住宅は多数存在しているものの、民間主体による特定優良賃貸住宅の整備が見込まれにくい地域においては、収入超過者の移転先の確保に向け、必要に応じて公営住宅の建替えの際の特定公共賃貸住宅の併設等公的主体による特定優良賃貸住宅の直接供給を検討する必要がある。

 

(7)社会ニーズに対応した賃貸住宅整備の誘導

社会ニーズに対応した優良な賃貸住宅の誘導方針を明確にした上で、所要の対応を図った物件に対する支援を推進する。
具体的に長寿社会対応については、安心して住み続けられる住宅ストックの形成という視点から、加齢に伴う身体機能の低下に最小限の改変により対応可能な仕様を条件づけることが望ましい。この場合において、手すりの位置・形状等入居者の身体状況に合わせて対応を図ることが望ましい項目については、できる限り性能的な基準を設定して、硬直的な運用とならないよう注意すべきである。
また、環境共生仕様の採用に関しては、建設省が制定している環境共生住宅市街地ガイドラインに掲げられている計画項目のうち、低コストで対応可能なものを条件づけて誘導を図ることが望ましい。
なお、公社による一括借上方式の対象を選定する際に、社会ニーズに先導的に対応している物件を優先することは、優良な物件の供給を誘導する上でも有効と考えられる。

 

第4 住宅関連情報の提供方策のあり方

 

1 住宅関連情報に関する現状

 

(1)消費者保護の必要性

消費者が各々のライフスタイルやライフステージに見合った住まい方を実現すべく持家の取得、改善、建替え又は借家への入居等を行っていく際には、住宅に関する様々な情報を入手した上で適切な選択・交渉等を行う必要がある。
しかし、日本においては住宅は「一生に一度の買い物」の場合が多く、住宅に関して基礎的な知識を十分に持ち合わせていない消費者がいざとなって単独で情報を収集することには限界がある。
特に、戦後人口が急速に増大してきた千葉市においては、住宅供給事業者と消費者の地縁的な繋がりが薄いため、消費者は、住宅関連情報を住宅情報誌やショールーム、住宅展示場等で入手せざるを得ず、これらにおいて提供されている情報の内容や量には偏りがある。さらには、知っておくべき情報及びその所在、情報を評価する指標等を消費者が知る機会がないことなどから、必要な情報を適時適切に入手できず、選択指標を持たないままに住宅の取得等を行っている状況にある。
結果として、住宅の取得等の際の行き違いや瑕疵等のトラブル、取得後の住宅における住まい方、性能、コスト等に関する不満などが発生している。

 

(2)居住水準の向上を図ろうとする消費者に向けた「質」に関する情報提供と十分な「量」の情報提供の必要性

長寿社会の到来、都市化の進展等の経済社会情勢の変化が進行しつつある中で、住生活の将来ビジョンや質の高いまちづくり等「質」に関する知識の重要性が増しつつある。しかし、消費者は、将来の住生活ビジョンに関する知識や住宅・住環境の持つ社会性に関する認識などが不十分なままに住宅の取得等を行い、後になって住空間や設備の陳腐化、住環境の悪化等に直面するケースが多い。
また、居住水準の向上を図るために住替え、リフォーム等を行う際には物件や業者に関する情報、特に良質な借家物件、リフォーム業者等の情報を「量」的に十分に収集した上で比較検討を行い選択する必要があるが、現状ではその様な情報が十分に提供されていない。
このように「質」に関する指標を持たないこと、また、十分な「量」の情報を入手できていないことが居住水準の向上に向けた取組みを阻害している。

 

(3)事業者等の資質向上、体制整備の必要性

消費者がライフスタイルやライフステージに合った、豊かさを実感できる住生活を実現するためには、供給事業者、設計者、リフォーム業者等(以下「事業者等」という。)が消費者ニーズを的確に把握し、消費者の満足する住宅の供給等を低コストで行える必要がある。
しかし、事業者等によっては耐久性、耐震性、環境共生、長寿社会対応等高度化・多様化する社会ニーズへの対応が遅れている場合や生産性の向上・品質管理等が十分でない場合等消費者ニーズに対応し得ていないケースが見られる。

 

2 講ずべき施策

 

(1)不満、トラブル等の発生防止に向けた情報提供及び相談体制の強化

消費者が住宅に関する必要な情報を必要な時に入手でき、取捨選択して活用することにより、性能・コスト等に関する不満やトラブルの発生が防止され、各々のライフスタイルやライフステージに見合った住まい方を実現できるよう、以下の施策を推進する必要がある。

1.住宅の基礎知識に関する消費者の認識を高めるため、講演会、リーフレットの配布等の啓発事業を推進する。

 

2.持家の取得、改善、建替え又は借家への入居等の際に入手すべき情報とその所在・評価指標、市の保有する行政情報等民間からは供給されにくい情報を提供する。
この場合において、市が保有する情報のうち、関係法令への適合性や地盤条件等住宅・宅地の選択等の際に知っておく必要性の高い情報については、公開・非公開の別を分類した上で、公開可能なものについては、概要、入手先等を整理し、積極的に情報提供していくことが望ましい。

 

3.住宅関連情報の提供方法に関しては、講演会、パンフレットの配布、ネットワークの活用等による情報提供と併せて、常設の住宅相談窓口を早急に整備することにより、住宅関連の基礎的な知識を持たない消費者の相談に総合的に応えていく必要がある。また、消費者が専門的な知識の不足を補えるよう、建築士等による非営利の相談活動に対して会場の提供、広報の実施等の支援を推進する。
相談窓口の設置に際しては、住宅の取得、改善、建替え又は借家への入居等に当たり消費者が知っておくべき情報、その入手方法及び分析する際の留意点をマニュアル的に整理しておくなど、相談員が消費者を的確に助言・指導しうる体制を整備しておく必要がある。

 

4.ネットワークや住宅相談窓口の利用状況の解析等を通じ、公的に情報提供すべき内容、時期及び相手並びにその効果的な提供方法のあり方を検討した上で、信頼性が高く各種ニーズへの的確な対応が可能な住情報交流拠点を整備し、住宅相談窓口等の機能を吸収する。
消費者が必要な情報を効率的に収集できるようにするためには、物件や業者等に関しても十分な量の情報を提供できる「住情報バンク」的な機能を当該拠点が果たすことが有効と考えられる。このため、公営・公団・公社等の公的住宅の募集・情報提供窓口との一本化や民間の宅地建物取引分野との連携方法等について検討を進める必要がある。

 

5.また、住宅関連情報のうち、千葉県が提供するものについて必要に応じて仲介・提供を行っていくことが考えられる。

 

(2)居住水準の向上に向けた住替え、リフォーム等を支援する情報の提供

居住水準の向上に向けた消費者の行動を支援するため、以下の施策を推進して「質」の向上に関する情報や物件、設計者・施工者の状況等に関する十分な量の情報を消費者が入手できるシステムの構築を図る必要がある。

1.住生活の将来ビジョンや質の高い住まいづくり、まちづくり等に関する情報提供をシンポジウムの開催、リーフレット等の発行を通じ推進する。また、その際には長寿社会対応住宅のモデルルーム整備等効果的な情報提供手法の採用に努める。

 

2.リフォーム・増改築や建替えに関する手法、関連制度等に関する情報提供、相談体制を強化する。この場合において、長寿社会対応住宅の整備に係る情報は、関係部局間の連携を図りつつ提供していくことが望ましい。

 

3.公的賃貸住宅、優良な民間賃貸住宅等のストックに関する情報や設計・施工者、コンサルタント等に関する情報を消費者が入手できるシステムを、民間事業者の団体等と連携を図りつつ構築する。

 

(3)事業者等への情報提供及び啓発

消費者ニーズの的確な把握及び当該ニーズへの的確な対応に向けた事業者等の体制の整備を支援するため、以下の施策を推進する必要がある。1.千葉市内の住宅や住生活の実態などの定期的な把握及びそれらを集約したデータ集の発行等を通じ事業者等による消費者ニーズの把握を支援する。

 

2.社会ニーズに対応した優良な住宅・設備・部品等の仕様、基準、施行方法に関する情報を講習会の開催、冊子の配布等により事業者等に提供し、技術開発・商品開発を促進する。

 

3.設計・施工段階におけるコスト管理手法等に関する情報を講習会の開催、冊子の配布等を通じ事業者等に提供し、生産性の向上や品質管理の徹底等を促進する。

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