更新日:2015年3月24日

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住宅政策審議会 第三次答申(平成11年8月31日)

平11年8月31日

 

千葉市長 松井 旭 様

 

千葉市住宅政策審議会
会長 服部 岑生

 

新たな時代を展望した千葉市の住宅政策の推進方策について
(第三次答申)

 

本審議会は、平成8年7月30日に、貴職から「新たな時代を展望した千葉市の住宅政策の推進方策について」諮問がなされたことを受け、調査審議を行ってきた。

 

これまでに、「市営住宅及び特定優良賃貸住宅の供給・管理施策のあり方」並びに「住宅関連情報の提供方策のあり方」について平成9年3月28日に第一次答申として取りまとめ、また、「社会ニーズに対応した先導的なモデル事業への千葉市住宅供給公社の取組みのあり方」及び「マンションストックの改良・保全推進方策のあり方」について平成9年11月21日に第二次答申として取りまとめたところである。

 

本答申は、「良質な民間住宅の整備誘導方策のあり方」及び「既成市街地等における住宅及び住環境の整備改善方策のあり方」について、基本的な考え方や今後講ずべき施策を取りまとめたものである。

 

本答申に関する事項のうち、少子・高齢社会における居住ニーズに的確に対応するためには、住宅行政と福祉行政との連携が不可欠であり、既成市街地等における住環境の整備改善を図るためには、建築指導、都市計画、道路等の基盤施設整備との連携が必要である。本答申の内容を含め、今後の住宅政策の実施に当たっては、住宅以外の関連行政分野との連携を一層強化し、総合的に取り組むことを特に要望する。

 

また、本答申を含めて、これまでの答申においては、定住人口の確保という視点から、公的主体による賃貸住宅や分譲住宅の供給、持ち家取得等に対する情報提供・相談受付等の講ずべき施策を具体的に提示してきたところである。こうした施策を積極的に推進し、良質な住宅の供給や住環境の整備等に努めるとともに、市民生活全般にわたる施策を総合的に推進することにより、誰もが千葉市に住みたいと思えるよう、居住の場としての魅力を高めていくことが、100万人定住都市の実現につながるものである。

 

現在、千葉市は厳しい財政状況に直面しているが、本審議会の答申を十分に参酌し、その実現に努めることを期待する。

 

目次

第1 良質な民間住宅の整備誘導方策のあり方

第2 既成市街地等における住宅及び住環境の整備改善方策のあり方

 

第1 良質な民間住宅の整備誘導方策のあり方

 

1 検討主旨

これまでの千葉市における住宅政策は、「千葉市住宅マスタープラン」等に基づき、市営住宅や特定優良賃貸住宅などの公的賃貸住宅の供給や、利子補給制度による持ち家取得の支援等を中心に進められてきた。
しかし、近年は、急速な少子・高齢化の進展等の社会情勢の変化、阪神・淡路大震災を契機とした安全性に対する意識の向上、地球温暖化等の環境問題に対する関心の高まりなど、住宅政策を取り巻く状況は大きく変化している。また、設計、施工の不備等による欠陥住宅の増加、住宅室内における化学物質による健康への影響など、住宅に関連する様々なトラブルが発生し、社会問題化している。
一方、行財政改革、規制緩和、地方分権等の社会システムの見直しが求められている中で、国においては、民間の住宅供給能力の充実や財政制約の強まり等を踏まえ、住宅政策について、公的主体による直接供給や公的支援を中心とする体系から、住宅市場全体に視野を広げた体系へと再編することが示されている。
このような状況の中で、千葉市においても、市民の約85%以上が居住する民間住宅について、公共と民間との役割分担のあり方に十分留意しつつ、多様化する政策課題に対応した適切な施策を講じていくことが必要である。
なお、本答申の対象とする「民間住宅」とは、一戸建て住宅、分譲マンション及び民間賃貸住宅等の住宅であり、公的主体によって供給・管理されている市営住宅等の住宅を除いた民間住宅全般である。

 

2 民間住宅の現状と課題

 

(1) 千葉市における民間住宅の現状

千葉市内の居住世帯のある専用住宅30万5千戸のうち、持ち家は16万3千戸(53%)、借家は13万4千戸(44%)となっている。また、借家13万4千戸の内訳は、民間借家7万6千戸(57%)、公的借家3万9千戸(29%)、給与住宅1万9千戸(14%)となっている。
住宅の建て方別には、持ち家16万3千戸のうち、一戸建ては11万2千戸(68%)、共同建ては5万戸(31%)、長屋建ては2千戸(1%)であり、借家13万4千戸のうち、一戸建ては1万1千戸(8%)、共同建ては11万8千戸(88%)、長屋建て5千戸(4%)である。
また、一住宅当たりの延べ床面積は、持ち家は104平方メートルであるのに対し、借家は45平方メートルであり、規模の小さなものが多くなっている。
建築時期について、新耐震基準が施行される昭和55年以前に建築された住宅は、木造住宅は7万1千戸(49%)であり、非木造住宅16万戸は7万5千戸(51%)である。
手すりの設置や段差の解消など高齢者等のための設備がある住宅は、持ち家は8万4千戸(52%)であり、このうち、一戸建ては56%、共同建ては43%、長屋建ては40%である。借家は2万9千戸(21%)であり、このうち、一戸建ては24%、共同建ては22%、長屋建ては7%である。(平成10年住宅・土地統計調査(平成11年6月公表速報値)による。)

 

(2) 少子・高齢化の進展への対応

現在の千葉市の人口構成は、65歳以上の占める割合が10%程度で推移しており、全国平均に比較して、比較的若い世代が多くなっているが、今後、急速に高齢化が進行することが予想されている。高齢化が急速に進行していくなかで、高齢者が可能な限り住み慣れた地域社会で安心して生活できるようにすることは、住宅政策の重要な課題である。
そのためには、加齢等により身体機能の低下や障害が生じた場合においても、そのまま安全で快適に住み続けて、自立した日常生活を送ることができ、また、介護を受けることが必要になった場合にも、容易に介護サービスが受けられるように高齢者等の生活に配慮したバリアフリー化された住宅の整備を進めることが求められている。バリアフリー化された住宅は、高齢者等が使いやすく、介護サービスを行い易くするものであると同時に、すべての人にとって住み易いものである。
また、少子化に対応するため、子供を育てやすい環境を整備することも求められている。

 

(3) 住宅の安全性の向上の必要性

平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災においては、住宅の倒壊や火災の延焼により、住宅をはじめとする建築物に甚大な被害が生じ、多くの人命が失われたところである。この教訓を踏まえ、住宅の耐震性の向上等の重要性が再認識され、住宅の安全性の確保に対する居住者の意識も高まっている。
千葉市においても、建築後年数が経過した住宅が多く、特に新耐震基準が施行された昭和56年以前に建築された住宅の中には、耐震性が不十分であり、震災時に倒壊する恐れのあるものも存在することから、こうした住宅の安全性の向上を図っていくことが求められている。
また、老朽住宅が建て込んでおり、道路が未整備である地域においては、震災時に住宅の倒壊や火災の延焼等による甚大な被害の発生が懸念されるため、地域住民の生命や財産を守るという観点から、その整備を進めていくことが求められている。

 

(4) 住宅に関する環境問題の深刻化

近年、地球の温暖化等の環境問題が深刻化しており、その主な要因として地球規模でのエネルギー消費の増大による二酸化炭素の排出が指摘されている。住宅におけるエネルギー消費も増加し続けており、その削減のための取組みを充実させることが求められている。
また、経済成長期に建てられた住宅等が解体されることで大量の廃棄物が排出されることが予想されるが、資源の有効利用や環境への影響の低減が求められている。
さらに、住宅の気密性が向上しているが、住宅の室内において、建材等から放散するホルムアルデヒド等の化学物質による人体への健康影響が懸念されており、速やかな対応が求められている。

 

(5) 住宅に関するトラブルの増加

PL法の施行や阪神・淡路大震災の被害を契機として、住宅に対する消費者の意識が高まっている中で、設計、施工の不備等による欠陥住宅等のトラブルが増加しており、社会問題化している。
また、住宅建設工事を請け負った者が、住宅の完成前に倒産等をしたことにより、施主が多大な負担を強いられている事例が、近年の経済情勢の悪化を背景に増加している。
こうした住宅に関するトラブルの発生を未然に防止するため、情報の提供や、万一、トラブルが発生した場合に、市民が対応を相談できる体制の整備が求められている。

 

(6) 中古住宅の適切な維持・管理の必要性

現在の住宅市場は、依然として新築が中心であるが、今後は、人口増加の鈍化のほか、投資余力の減少、環境問題の深刻化等から、既存の住宅ストックを有効に活用することが重要となっている。
したがって、新たに建設される住宅の質の向上だけでなく、既存の住宅ストックを適切に保全・改良し、住替え等により有効活用を図るため、中古住宅の適切な維持・管理の必要性が高まっている。
また、住宅市場において、中古住宅が円滑に流通するためには、当該中古住宅の性能を適正に評価し、表示する仕組みを整えるなど、条件整備が求められている。

 

3 基本的な考え方

 

(1) 良質な住宅ストックの形成

欠陥住宅や老朽住宅等の安全性に問題のある住宅も存在するなかで、市民が安心して生活できるように、安全性等の住宅が最低限備えるべき基本的な性能を確保することが必要である。
また、これからの住宅の整備に当たっては、こうした安全性等の確保に加えて、バリアフリー化等の高齢化社会への対応や、省エネルギー等の環境への配慮等についても、積極的に取り込んでいくことが望ましい。

 

(2) ストック対策の重視

これまで千葉市においては、増加する人口の受け皿としての住宅を確保するため、新規の住宅供給を中心とした住宅政策を推進してきたところである。しかし、今後の住宅政策においては、新規に供給される住宅の質の向上とともに、既に形成された住宅ストックを有効に活用することを重視することが重要となる。
また、市民が、自らのライフサイクルや家族形態等の変化に応じて、必要になった場合には、適切な住替えやリフォームを行い、既存の住宅ストックを有効に活用するように誘導することが望ましい。
先の阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、震災時には倒壊の危険性がある老朽住宅等については、適切な改良等を実施することにより、その安全性を向上させることが必要である。
また、少子・高齢化の進展に対応するとともに、すべての人にとって暮らしやすい住宅とするため、住宅の内外において、バリアフリー化を促進していくことが重要である。
既存の住宅ストックに対する施策として、居住者の安全性及び利便性を向上させる観点から、耐震改修及びバリアフリー化の促進について、重点的に取り組んでいく必要がある。

 

(3) 民間住宅に対する行政の関与の考え方

民間住宅に対する行政の取組みは、近年の民間事業者における住宅供給能力の充実、官民の役割分担の見直しを含めた行財政改革の推進等を踏まえ、民間住宅市場において、市民が自らの選択と努力により、良質な住宅を確保できるよう、市民が適切な判断ができる条件整備をすることを基本とするべきである。

 

(4) 民間住宅に対する支援策の基本的な考え方

市民が住宅を選ぶ際には、各自のライフスタイルやライフステージに見合ったものを、住宅市場の中で確保することが原則である。
しかし、住宅に関連する情報は非常に広範にわたることから、市民は、住宅に関して適切な選択を行うために充分な情報を入手できていない場合が多いのが現状である。住宅は他の商品とは異なり、非常に高額なものであり、その取得は一生のうちに何度も経験するものではない。その結果、十分な情報が入手できず不満やトラブルが発生している事例が増えており、必要な情報を適切に提供できる体制の整備が必要である。
また、住宅に関するトラブルも複雑化していることから、消費者が相談できる窓口を充実させる必要がある。
このような状況を踏まえて、公正中立な立場からの信頼性の高い情報を提供するとともに、住宅に関する市民からの様々な相談に対応できる体制を充実させることを民間住宅に対する取組みの中心に据えることが重要である。

 

4 講ずべき施策

 

(1) 既存住宅の安全性の向上及びバリアフリー化の促進

老朽化した木造住宅など、震災時には倒壊の危険性がある住宅の居住者等に対して、耐震性の向上の必要性等についての啓発を行い、住宅の安全性の確保に対する意識の向上に努めるとともに、市においても耐震診断や耐震改修工事の実施に対する支援策を検討する必要がある。
また、住宅のバリアフリー化の必要性について啓発に努めるとともに、バリアフリー化に対する支援策の充実を検討する必要がある。

 

(2) 情報提供や相談体制の充実・強化

本審議会の第一次答申「住宅関連情報の提供方策のあり方について」を受け、常設の住宅相談窓口として、平成9年7月に開設した「住宅関連情報提供コーナ-(すまいアップコーナー)」を、なお一層、充実・強化するため、次の方策を講ずることを期待する。

1.良質な住宅ストックの形成を促進するため、バリアフリー化や環境との共生に関する情報についても、積極的に提供すること。

 

2.既存の住宅ストックの有効活用を図る観点から、リフォームや住替えに関する情報の充実に努めること。

 

3.消費者のニーズが高い、設計や施工に関わる事業者に関する情報について、関係団体等との連携も一層図りつつ、消費者に情報を提供する方法の検討を進めること。

 

4.情報提供に当たって、公的機関以外が発信する情報については、その内容を評価する仕組みを検討すること。

 

5.住まいに関する相談は、専門的かつ幅広い分野にわたるものが多いことから、対応マニュアルの整備等に努めるとともに、設計者や供給事業者等の関係団体やNPO等との連携を深めることにより、相談内容に見合った適切な相談先の紹介や相談機能の充実を図ること。

 

6.市民が利用し易いようにするため、相談を受け付ける日時の拡大を図ることを検討すること。

 

7.市民の活用をより一層促すため、対応可能な相談内容を具体的に明示することなど、住宅関連情報提供コーナー自体のPRに努めること。

 

(3) 政策誘導機能を強化した経済的支援の実施

民間住宅に対する経済的支援の実施に当たっては、最少の経費で最大の効果を挙げる観点から、最も効率的かつ効果的な仕組みを検討する必要がある。特に、少子・高齢社会への対応、環境との共生、長期耐用等の政策課題に対応した質の高い住宅の整備を誘導する観点から、市が民間住宅に対して経済的支援を実施する場合においては、次の方策により、政策誘導機能を強化していくことが必要である。

1) 「千葉市住宅建築資金利子補給制度」の見直し

千葉市においては、持ち家取得を促進するため、「千葉市住宅建築資金利子補給制度」を実施してきたところであり、本制度は、千葉市内で住宅の取得等をする方々に広く活用されている。
しかし、限られた財源を有効に活用し、良質な住宅供給を誘導するためには、政策誘導機能を強化する観点からの見直しを検討するとともに、住宅性能表示制度等との連携についても検討すること。

2) 「地方公共団体施策住宅特別加算制度」の活用

地方公共団体が、独自に政策誘導すべき住宅の基準を住宅マスタープランに位置付けた場合に、当該基準に該当する住宅を取得する者が、公庫融資の割増しを受けることができる「地方公共団体施策住宅特別加算制度」が平成10年度に創設されたところである。
千葉市においても、地域特性に対応した民間住宅の質の向上を誘導するため、本制度を適切に活用することが有効と考えられることから、今後の住宅マスタープランの見直しに併せて、政策誘導すべき住宅の基準を位置付け、本制度の活用を検討すること。

 

(4) 住宅性能表示制度等の活用の促進

平成11年6月に「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が公布されたことを受け、本法律において創設される住宅性能表示制度等が積極的に活用されるよう、消費者や事業者に対する情報提供等に努める必要がある。また、住宅の性能の評価・検査を適正に実施するため、県等の関係機関との連携を図りつつ、実施体制の整備を検討する必要がある。

 

第2 既成市街地等における住宅及び住環境の整備改善方策のあり方

 

1 検討主旨

住宅に関する課題は、市街地が形成された経緯や都市構造の変遷と密接な関係を有しており、都市構造における地域の位置等によって異なった課題を有するなど、地域により様々な特徴が見られる。

 

平成7年3月に策定された「千葉市住宅マスタープラン」においては、市内の各地域の特性に応じて、まちづくりと連動した住まいづくりを推進する観点から、市内の住宅市街地をその特性に応じて類型化し、各地区の課題の整理や整備の方向等が定められている。
本審議会においては、この「千葉市住宅マスタープラン」における地区区分を踏まえて、調査審議を進めてきたが、各地区の概要は、次のとおりである。

 

昭和30年代から40年代を中心に建設された分譲共同住宅(マンション)や公的賃貸住宅の中高層の住宅は、千葉市の住宅の半数以上を占め、都市型住宅として普及し、市民生活の基盤として大きな役割を担っている。数多い共同住宅の中には、安全性や快適性の観点から、外壁や設備等の大規模な修繕や建替え等を検討しているものもあり、その場合には、それぞれの状況に応じ、これらを適切に誘導する必要がある。
なお、住宅団地に関する事項については、本審議会の第二次答申において、マンションストックの改良・保全推進方策のあり方について講ずべき施策の方向を提示したところであり、その着実な推進を期待する。

 

計画的に開発された戸建て住宅地等は、道路等の基盤施設の整備水準が高く、良好な住環境が形成されており、現在の良好な居住環境が将来にわたって維持されるよう、適切な保全を図っていく必要がある。

 

今後、住宅が建設される地域は、道路等の基盤施設整備と連携しつつ、計画的な住宅地の整備を誘導する必要がある。

 

主要駅周辺及びその周辺部の既成住宅市街地(以下「既成市街地」という。)は、郊外部の住宅地と比べ、緑や水辺などの自然が少ないことや近隣の喧噪等のほか、道路が狭い地域もあることなど問題点はあるが、次のような利点があり、利便性の高い都市居住の実現が可能である。
既成市街地に居住することにより、交通の利便性が高いことから、通勤時間が軽減される。また、学校等の教育施設や保育所等の社会福祉施設のほか、商業・娯楽施設等の整備水準も相対的に高いことから、利便性の高い都市生活の実現が期待できる。

 

地区内の居住者が増加することにより、地元での商業やサービス業への需要が高まり、地元商店街をはじめとする地域の活性化にも寄与することが期待できる。

 

教育施設、社会福祉施設等について、既存施設を有効に活用することができ、新たな施設の整備等に要する費用の軽減が図られる。

 

職住近接による交通混雑の緩和を通じて、大気汚染の軽減に寄与するとともに、都心に住宅が供給される結果、郊外部の開発が抑制されることとなれば、自然環境の保護にも資することができる。

 

一方、道路が未整備である既成住宅市街地では、災害時には住宅の倒壊により避難や消火・救助活動に支障をきたすとともに、火災の延焼等により重大な被害が発生するおそれがあることから、市街地の防災性の向上という視点からの取組みが求められている。

 

以上から、既成市街地において、良質な住宅供給を促進するとともに、住環境の整備を図る必要性が高いものである。しかし、既成市街地における商業活動等が低迷している現状では、この地域における住宅及び住環境の整備改善を土地所有者や民間事業者の取組みだけに期待することは困難な面があり、行政による支援が求められている。
したがって、本答申においては、市内全域を対象とした住宅単体に関する施策として、良質な民間住宅の整備誘導方策について取りまとめるとともに、こうした施策に加え、特に地域特性に応じた施策が必要と考えられる既成市街地における住宅及び住環境の整備改善の方向について重点的に検討し、講ずべき施策の方向について取りまとめたものである。

 

2 既成市街地の現状と課題

 

(1) 主要駅周辺

JR千葉駅等の主要駅周辺は、戦災復興等で整備が進められ、その後も市街地再開発事業や土地区画整理事業が実施されており、都市の骨格は概ね整備されてきている状況にある。
しかし、JR千葉駅周辺を中心として、近年は居住人口の減少が顕著なものとなっている。特に最近は、景気の低迷や郊外部への大型店舗の出店等により、商店街の衰退が進み、地域全体の活力が低下している。
また、主要駅に近接する利便性の高い地区においても、既存の建築物が除却された跡地の有効利用が進んでいない事例も見受けられる。
こうした主要駅周辺においては、人口の減少をくい止め、地域のコミュニティの維持を図るとともに、定住人口の増加を図り、地域の活性化を促進することが必要である。

 

(2) 既成住宅市街地

主要駅周辺の外側に広がる既成住宅市街地においては、老朽化した住宅が密集しているという状況には至らないものの、狭隘な道路に面して住宅が建て込んでいる地区があり、災害発生時には円滑な避難や消火・救助活動が困難なものとなるおそれがある。既成住宅市街地においては、街区の骨格を形成する道路は概ね整備されているが、その内部の細街路は未整備である場合が多く、日常の通行や非常時の避難の安全性の観点から問題が多いものと考えられる。
また、比較的接道条件のよい敷地等においては、ある程度は住宅の建替えが行われており、全体的に建物の老朽化の度合いはあまり高くない。
したがって、既成住宅市街地においては、狭隘な道路の拡幅を促進し、住宅の更新を誘導することが必要である。

 

3 基本的な考え方

 

(1) 少子・高齢社会における居住の場としての既成市街地の重視

既成市街地に居住することにより、利便性の高い都市居住の実現が期待できる。
特に、働きながら子育てをする世帯等にとっては、住まいを選択する上で、職場と住居が近接していることや、学校や保育所等の公共施設や商業、医療、娯楽施設等の整備水準が高いことのメリットは大きいものと考えられる。また、高齢者世帯にとっても、高齢者福祉施設等の公共施設の整備水準が高く、徒歩で生活ができることのメリットは大きい。
したがって、既成市街地は、高齢化や家族形態の変化が一層進む21世紀における居住の場となることが期待できる。

 

(2) 100万人定住都市の実現につながる既成市街地の整備改善

既成市街地における住宅及び住環境の整備改善を促進することは、新しく開発された住宅地における定住人口の増加と併せて、100万人定住都市の実現にも寄与することが期待できる。

 

(3) 千葉市らしさの創出

既成市街地において住宅及び住環境の整備改善を進める上で、地域のあるべき市街地像等の将来のビジョンを明確に示すとともに、地域固有の歴史、文化等についても十分に配慮することが必要である。

(4) 基盤施設整備との連携

道路や下水道等の基盤施設の整備状況を十分に勘案するとともに、必要に応じ、住宅の供給・整備と併せて、基盤施設の整備を実施することについても検討することが必要である。

 

4 講ずべき施策

(1) 主要駅周辺における良質な住宅供給の促進

1) 定期借地権等の活用

主要駅周辺において、建築物の更新に併せて、良質な住宅が供給されるように誘導することが望ましい。
この場合、こうした地域の地価は相対的に高水準であることから、具体の事業化に当たっては、地価を顕在化させない定期借地権等の手法を有効に活用し、用地コストを抑制することが有効である。
そのために、市民の目にも効果が見えやすい定期借地権を活用した住宅供給のモデル事業について検討することが望ましい。

2) 住宅と公共施設等との合築等の促進

主要駅周辺における住宅供給を促進するとともに、当該地域の居住者の利便性の向上や高齢者の居住の安定等を図る観点から、住宅と保育所や高齢者福祉施設等の公共施設や商業・業務施設等との合築や連携を図った整備が有効と考えられる。

3) 公的賃貸住宅の供給の誘導

公的賃貸住宅等の供給に当たっては、主要駅周辺における供給を重点的に誘導することが有効である。また、高齢化社会に対応するため、高齢者向け賃貸住宅の供給についても検討することが望ましい。

(2) 既成住宅市街地の整備改善

1) 土地所有者等に対する啓発

既成住宅市街地の整備改善を促進するためには、老朽住宅が建て込んでいることや道路が狭いことに対する防災上の危険性を居住者が認識するとともに、道路等の整備改善に対する意識を高めることが第一である。このため、土地所有者等に対して、当該地区の整備改善の必要性について啓発に努める必要がある。

2) 住宅の耐震性の向上

震災時には倒壊の危険性がある住宅について、耐震診断や耐震改修の必要性、方法等についての啓発に努めるとともに、関係団体等との連携を図りつつ、情報提供や相談受付の体制を充実・強化する必要がある。また、耐震診断や耐震改修工事の実施に対する支援策についても検討する必要がある。

3) 狭隘な道路の解消に向けて

イ 住宅等の後退の徹底

防災性及び住環境の向上の観点から、狭隘な道路を拡幅することの必要性等について、土地所有者等に対する啓発を行う必要がある。
住宅の建替等に際しては、確実に住宅や門塀等の工作物を後退をさせるよう徹底し、後退を遵守した者に対して、プレート等により後退したことを明示する仕組みを検討することが有効である。

ロ 後退部分の整備に対する支援

特に拡幅の必要性が高い狭隘な道路については、後退部分の整備費の補助を行うなどの具体的な支援策の導入を検討する必要がある。

ハ 「地方公共団体施策住宅特別加算制度」の活用

公庫融資の割増しを受けることができる地方公共団体施策住宅特別加算制度を活用して、住宅を後退させ、適切な道路幅員を確保するとともに、塀を生け垣にするなど、住環境の向上に寄与する住宅整備を誘導することも有効である。

4) 協調建替や共同建替の誘導

接道条件が悪く、狭小な敷地において、老朽住宅等を建て替える場合には、土地の有効利用を図るとともに、合理的な建築計画とする観点から、協調建替や共同建替を促進することが必要である。
このため、土地所有者等に対して、協調建替の必要性等について、積極的に啓発を行う必要がある。
また、協調建替等を促進するためには、土地所有者等の権利調整や計画策定等の円滑化を図るため、コンサルタント等の専門家の派遣に対する支援策の導入についても検討することが望ましい。
なお、協調建替等によって、老朽住宅等の不燃化が促進されることにより、災害時における安全性が向上することも期待できる。

(3) その他の地域特性に対応した取組み

1) 住民等によるまちづくり活動への支援

地域特性に応じた住宅の供給・整備を進めていくためには、建築協定や緑地協定、地区計画等を活用することなどにより、まちづくりのルールを明確にしていくことが必要である。
また、住民等による自主的なまちづくり活動やまちづくりのルールの明確化に向けた活動等に対して、行政が情報提供や相談・指導等の支援を行うことが有効である。

2) 地域の基礎データの整備

地域特性に応じた住宅の供給・整備を促進する場合には、地域単位での具体的な検討作業に活用するため、建築物、基盤施設等に関する詳細な基礎データの整備に努める必要がある。

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