更新日:2015年3月24日

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住宅政策審議会 第四次答申(平成12年7月27日)

平成12年7月27日

 

千葉市長 松井 旭 殿

 

千葉市住宅政策審議会
会長 服部 岑生

 

新たな時代を展望した千葉市の住宅政策の推進方策について
(第四次答申)

 

本審議会は、平成8年7月30日に、貴職から「新たな時代を展望した千葉市の住宅政策の推進方策について」諮問がなされたことを受け、関連する事項について、適宜、専門委員会を設置して、調査審議を行ってきた。

 

これまでに、平成9年3月28日に第一次答申として「市営住宅及び特定優良賃貸住宅の供給・管理施策のあり方」並びに「住宅関連情報の提供方策のあり方」について、平成9年11月21日に第二次答申として「マンションストックの改良・保全推進方策のあり方」及び「社会ニーズに対応した先導的なモデル事業への千葉市住宅供給公社の取組みのあり方」について、また、平成11年8月31日に第三次答申として「良質な民間住宅の整備誘導方策のあり方」及び「既成市街地等における住宅及び住環境の整備改善方策のあり方」について、とりまとめ、千葉市における住宅政策の主要課題について、講ずべき施策の基本的方向を提示したところである。

 

これまでに答申した施策については、可能なものから、順次、具体化されているが、千葉市の住宅政策の基本方針を示す「千葉市住宅マスタープラン」に、これまでの答申を反映させ、総合的かつ計画的に施策を展開していくことが適切である。

 

また、現行の「千葉市住宅マスタープラン」が策定された平成7年3月以降、住宅政策を取りまく経済社会情勢は、成長社会から成熟社会への移行など大きく変化しており、国の住宅政策も、ストック重視、市場重視の観点から再編が図られているところである。こうした状況の下、新たな時代の要請に応えうるものとするため、「千葉市住宅マスタープラン」を見直す必要がある。

 

このような認識の下、本審議会は、住宅政策における個別の主要課題に対応した、これまでの三次にわたる答申を総括するとともに、新たな時代を展望した千葉市における住宅政策のあり方について、総合的に調査審議を行ってきたところであり、今般、第四次答申として、「千葉市住宅マスタープランの見直しの基本的方向」について答申する。

 

なお、本答申をもって、平成8年7月30日の「新たな時代を展望した千葉市の住宅政策の推進方策について」の諮問に対しては、調査審議を終えるものである。

 

貴職におかれては、本審議会の答申を十分に参酌し、「千葉市住宅マスタープラン」の見直しを進めることを期待する。

 

なお、見直しに当たっては、住宅以外の関連行政分野のほか、他の公的主体や民間団体等との「連携」と「役割分担」に特に留意して、市民の立場に立った総合的な施策を掲げることが重要である。

 

また、「新・千葉市住宅マスタープラン」は、市民にとって、分かりやすい内容及び表現とするよう特に留意されたい。

 

目次

第1 「千葉市住宅マスタープラン」の見直しの必要性
第2 「千葉市住宅マスタープラン」の見直しに当たっての基本的な考え方
第3 「新・千葉市住宅マスタープラン」における施策展開の基本的な方向
第4 「新・千葉市住宅マスタープラン」における当面の重点施策
第5 「新・千葉市住宅マスタープラン」における基本目標の考え方
第6 「新・千葉市住宅マスタープラン」における施策の実施に向けて

 

用語の解説

 

第1 「千葉市住宅マスタープラン」の見直しの必要性

 

1 経済社会情勢の変化への対応

現在は、経済の右肩上がりから安定成長への移行のほか、少子・高齢化の進行、環境問題への関心の高まり等の様々な点において、成長社会から成熟社会への移行という大きな変革期にある。
また、価値観やライフスタイルの多様化、女性の社会参画等が進む中で、市民の住宅に対するニーズも、高度化・多様化する傾向にある。
こうした住宅政策を取りまく経済社会情勢の変化に対応し、新しい時代の市民ニーズに応えうるものにするため、「千葉市住宅マスタープラン」の見直しを行う必要がある。

 

2 国における住宅政策体系の再編への対応

近年、行財政改革、規制緩和、地方分権等の社会システムの見直しが進められている中で、国の住宅政策においては、民間の住宅供給能力の充実や財政制約の強まり等を踏まえて、地方公共団体等の公的主体による直接供給や公的支援を中心とする体系から、市場全体に視野を広げた新しい体系へと再編が進められている。
平成12年6月21日に住宅宅地審議会においてとりまとめられた「21世紀の豊かな生活を支える住宅・宅地政策について」においては、今後の住宅政策の基本的方向性として、「市場を通じて国民が共用しうる良質な住宅ストックを形成し、管理し、円滑に循環させることのできる新しい居住水準向上システム」の確立を目指していくことが示されたところである。
このため、住宅政策体系再編の具体的方向として、
1.良質な住宅ストック・居住環境への再生
2.既存ストック循環型市場の整備による持続可能な居住水準向上システムの構築
3.少子・高齢社会に対応した「安心居住システム」の確立
4.ストック重視、市場重視の住宅政策体系を支える計画体系の再編
5.新たな住宅政策を支える公民の役割分担
が掲げられている。
こうした国の動向を勘案し、「千葉市住宅マスタープラン」についても、同様の方向で、見直しを行う必要がある。

 

3 千葉市新総合ビジョンの反映

千葉市においては、平成12年3月に、21世紀における市政の基本理念や基本目標、基本的方向や区ごとの将来像等を「千葉市新総合ビジョン」として、とりまとめた。
「千葉市住宅マスタープラン」は、住宅政策の分野について、「千葉市新総合ビジョン」を補完する役割を担うものであることから、当該ビジョンの策定に対応して、適切な見直しを行う必要がある。

 

4 住宅政策審議会答申の反映

現行の「千葉市住宅マスタープラン」は、本審議会が設置される前の平成7年3月に策定されたものであることから、本審議会の設置自体が重要施策として掲げられるに止まっている。
本審議会は、「千葉市住宅マスタープラン」に基づく重要施策の一つとして、平成8年7月30日に設置され、「新たな時代を展望した千葉市の住宅政策の推進方策について」諮問を受け、千葉市の住宅政策の主要課題について調査審議を行い、これまでに三次にわたる答申をしてきた。これらの答申内容については、既に具体化されたものもあるが、その内容を住宅政策の基本方針である「千葉市住宅マスタープラン」に位置付け、総合的かつ計画的に施策を展開していく必要がある。

 

第2 「千葉市住宅マスタープラン」の見直しに当たっての基本的な考え方

 

1 高齢社会に対応した施策の一層の充実

千葉市においても、今後、急速に高齢化が進行することが予想される中で、高齢者が安心して千葉市に住み続けることができるようにすることは、住宅政策における最重要課題の一つである。そのためには、住宅のバリアフリー化をはじめとする住宅のハード面での施策に加えて、福祉施策との連携を図りつつ、ソフト面での対応も含めた一層の施策の充実を図る必要がある。

 

2 住宅ストックの重視

これまで千葉市においては、増加する人口の受け皿としての住宅を確保するため、新規の住宅供給を中心とした住宅政策を推進してきた。しかし、今後の住宅政策においては、良質な住宅の供給を促進するための施策に加えて、既存の住宅ストックの適切な更新・維持管理等を促進し、住宅ストックを有効に活用することを重視していく必要がある。
その中でも、ストックの更新等に当たって様々な課題を抱えているマンションストック及び公共賃貸住宅ストックに対する施策について、重点的に取り組む必要がある。

 

3 まちづくりの観点に立った住宅政策の展開

良好なまちづくりを進める観点から、中心市街地の活性化、既成市街地の整備改善、住宅団地の再整備等各地域が抱えている課題に対して、住宅政策においても、積極的に対応することが必要である。

 

4 住宅関連情報の提供に関する施策の一層の充実

住宅市場全体を視野に入れた住宅政策を展開するためには、市民が住宅市場において良質な住宅を確保できるようにするため、市民自らが適切な判断ができる条件整備に努めることを基本とし、住宅に関する情報提供及び相談受付に関する施策の一層の充実を図る必要がある。

 

第3 「新・千葉市住宅マスタープラン」における施策展開の基本的な方向

 

「新・千葉市住宅マスタープラン」における施策展開の基本的な方向については、次のような構成及び内容とすることを提言する。

 

1 少子・高齢社会への対応

 

(1) 少子・高齢社会に対応した住宅ストックの形成

1) 民間住宅におけるバリアフリー化の促進

少子・高齢社会に向けて、バリアフリー化された良質な住宅ストックの形成を促進することは、高齢者や障害者の自立の支援、介護負担の軽減、住宅内における安全性の向上等を図る上で極めて重要である。
住宅のバリアフリー化を進めるためには、市民の認識を高める必要があることから、その必要性や効果、改修工事の設計・施工の進め方等について、情報の提供や相談を受け付ける体制の一層の充実を図る。また、市民がバリアフリー化された住宅を体験できるよう、モデルルームの整備に取り組む。
今後、新規に供給される住宅については、バリアフリー化を積極的に誘導するとともに、既存の住宅ストックについても、バリアフリー化のための改修工事等の実施を促進するため、利子補給制度の有効活用等も含めて、支援方策の充実を図る。

2) 高齢者向け公共賃貸住宅の供給

高齢者が安心して千葉市に住み続けることができるようにするためには、バリアフリー化された住宅の整備等に加えて、適切な福祉サービスの提供等が重要であり、公共賃貸住宅の果たす役割は大きい。
高齢者の安全や利便に配慮した住宅と生活援助員(ライフサポートアドバイザー)による福祉サービスが一体となった公営住宅(シルバーハウジング)の供給に努める。
また、民間の住宅市場において、緊急時対応サービス等を備えた高齢者向けの優良な賃貸住宅の整備を促進する「高齢者向け優良賃貸住宅制度」の導入に努める。

3) 公的住宅と福祉施設との連携

高齢者や障害者が自立した日常生活を送る上で、適切な福祉サービスが受けられることは重要であり、高齢者等の住居と福祉サービスの供給拠点である福祉施設を連携して整備することは有効な手法である。
公的住宅の整備に当たっては、当該公的住宅の居住者のみならず周辺住民をも対象とした福祉施設を併設し、地域の福祉サービスの拠点として整備することに努める。また、既存の福祉施設に近接して、公的住宅を整備することに努める。

4) 少子化への対応

ゆとりある住生活を実現し、子育てしやすい環境を整備するため、子育て世帯に対して、広くて良質な住宅供給の促進に努める。
また、働きながら子育てをする世帯にとって、職住近接であることから子育てがしやすい都心地域等において、良質な住宅の供給を促進するとともに、保育所等と連携した住宅の整備を促進する。

 

(2) 高齢期の居住を支援するしくみの整備

1) 居住を継続するための支援

高齢者が長年住み慣れた自宅に住み続けながら、一定の生活資金を確保して、豊かな生活を送るための選択肢の一つとして、高齢者が保有する資産を活用する方法が考えられる。自宅を担保に融資を受け、死亡時に自宅を売却して一括して精算する「リバース・モーゲージ」がその代表的なものであるが、国や他の地方公共団体の動向等も踏まえつつ、保有資産を活用したしくみの導入について検討を行う。

2) 円滑な住替えのための支援

高齢期における居住の選択肢の一つとして、高齢期の居住にふさわしくなくなった自宅を売却又は賃貸し、高齢者向けの住宅に住替えることなどが考えられる。こうした高齢期における円滑な住替えを支援するためには、高齢者のニーズに合致した適切な住居が選択できるよう、情報の提供や相談を受け付ける体制の一層の充実を図る。
なお、定期借家制度を活用することは、高齢者が自宅を賃貸する上で有効であることから、その普及に努める。

3) 高齢期における多様な住まい方の提案・支援

血縁に基づかない共同生活に対するニーズに対応するため、「コレクティブハウジング」などの導入やその支援方策についても、他の地方公共団体における取組み状況等も参考にしつつ、検討を行う。

 

2 住宅ストックの維持管理及び更新

 

(1) 民間住宅の改善

1) 安全性の向上

先の阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、老朽化した木造住宅など、震災時には倒壊の危険性がある住宅の居住者等に対して、耐震診断や耐震改修の必要性、方法等についての啓発に努めるとともに、情報の提供や相談を受け付ける体制の一層の充実を図る。
また、住宅の安全性の向上を図るため、利子補給制度の有効活用等も含めて、耐震診断や耐震改修の実施に対する支援策の実施に努める。

2) バリアフリー化の促進

住宅のバリアフリー化を進めるためには、市民の認識を高める必要があることから、その必要性や効果、改修工事の設計・施工の進め方等について、情報の提供や相談を受け付ける体制の一層の充実を図る。また、市民がバリアフリー化された住宅を体験できるよう、モデルルームの整備に取り組む。
今後、新規に供給される住宅については、バリアフリー化することを積極的に誘導するとともに、既存の住宅ストックについても、バリアフリー化のための改修工事等の実施を促進するため、利子補給制度の有効活用等も含めて、支援方策の充実を図る。

(2) マンションの維持管理及び更新

1) マンションの適切な維持管理の促進

マンションを適切に維持管理することは、管理組合の重要な役割であるが、マンションは所有形態が区分所有であることから、合理的な意思決定を行う上で問題が見受けられる。
マンションの適切な維持管理のためには、管理組合が適切に活動することが不可欠であることから、管理組合によって自発的に構成された協議会等による情報交流活動を支援するとともに、マンションに関する基礎知識等の情報提供に努める。
また、管理組合が適切な維持管理を進める上で、技術的・法律的な専門知識が必要となることから、協議会等の関係団体及び公的機関と連携しつつ、マンションに関する総合的な相談窓口を整備する。
さらに、適切な修繕・改修工事の実施を促進するため、利子補給制度の活用等を通じて、資金調達に対する支援の充実を図る。

2) マンションの建替えに対する支援

昭和30年代、40年代に市内に建設されたマンションの建替えに当たっては、区分所有者間の意見調整の難しさや専門知識の不足等から、合意形成が困難な場合が多くなることが予想されることから、事前の情報提供や相談等を通じて、合意形成の支援に努める。
また、公共公益施設とのバランスが確保された建替えを誘導するため、公共公益施設の容量や今後の整備計画のほか、それらを踏まえた建替計画のガイドライン等をとりまとめた「建替計画指導指針」の策定・周知に努める。
マンションの建替えに際しては、高齢者世帯等が過大な負担を伴わずに住み続けられることが大きな課題であり、そのための資金調達の方法等について検討を行う。

(3) 公共賃貸住宅の維持管理及び更新

1) 市営住宅の維持管理及び更新

既存の市営住宅の有効活用を図るため、「公営住宅ストック総合活用計画」を策定し、計画的かつ効果的な改善及び更新を推進する。

2) 公団賃貸住宅等の維持管理及び更新

市内の全住宅戸数の約1割を占める公団賃貸住宅についても、適切な維持管理及び更新を進めることが重要であり、都市基盤整備公団に対して、適切な取組みを要請する。

 

3 良質で多様な住宅の供給

 

(1) 良質な持家取得の促進

良質な持家取得を支援するため、資金調達の実態等を勘案しつつ、利子補給制度がより有効に活用されるように見直しを図る。
また、良質な持家取得を促すためには、信頼性の高い情報を公正中立な立場から提供するとともに、住宅に関する市民からの様々な相談に対応できる体制の充実に努める。
特に、住宅性能表示制度が積極的に活用されるよう、消費者や事業者に対する情報提供に努めるとともに、住宅の性能の評価・検査が適正に実施されるよう、県等の関係機関との連携を図りつつ、実施体制の整備に努める。

 

(2) 定期借地権を活用した住宅供給の促進

定期借地権の活用により、低廉な価格での良質な住宅供給が促進されることが期待できることから、その一層の普及促進を図る。
また、「スケルトン型定期借地権マンション」は、定期借地権を応用して、低廉な価格で耐久性のある良質な共同住宅を供給するとともに、将来の円滑な更新を担保するものであることから、その一層の普及促進を図る。
千葉市住宅供給公社において、公的機関としての高い信用力を背景に、社会ニーズに対応した先導的なモデル事業として、定期借地権付き住宅の供給を実施することを目指す。

 

(3) 良質な賃貸住宅供給の促進

低廉で良質な賃貸住宅の供給を促進するために創設された定期借家制度の普及を促進するため、積極的な情報の提供に努め、相談を受け付ける体制の充実を図る。

 

(4) 公共賃貸住宅の適切な供給

市営住宅については、「公営住宅ストック総合活用計画」を策定し、既存ストックの有効活用を図るとともに、真に住宅に困窮する低所得者の需要を踏まえた的確な供給を図る。
特定優良賃貸住宅については、既成市街地の整備改善や都心地域等における住宅供給等に資するものなど政策的に特に支援が必要なものに限定するとともに、既存住宅の入居状況や需要実態を勘案しつつ、適切な供給に努める。

 

4 まちづくりとの連携

 

(1) 既成市街地の整備改善の促進

既成市街地の整備改善を促進するためには、土地所有者等が防災上の危険性を認識するとともに、道路等の整備に対する意識を高める必要があることから、そのための啓発に努める。
新耐震基準施行以前に建設された住宅の居住者等に対して、耐震診断や耐震改修に関する情報の提供や相談を受け付ける体制の一層の充実を図るとともに、利子補給制度の有効活用等も含めて、耐震診断や耐震改修工事の実施に対する支援策の実施に努める。
狭隘な道路に面している地域において、適切な道路幅員を確保するため、住宅の建替え等に際しては、住宅や門塀等の工作物の後退を徹底し、後退したことを明示するととともに、後退部分の整備に対する補助等の実施に努める。
接道条件が悪く、狭小な敷地において、老朽住宅等を建替える場合、土地の有効利用を図りつつ、合理的な建築計画とする観点から、協調建替や共同建替を促進することが有効であり、土地所有者等の権利調整や計画策定等の円滑化を図るため、コンサルタント等の専門家の派遣に対する支援策の実施に努める。
また、水害等の自然災害に対して、宅地浸水被害等を軽減するため、盛土等の宅地の整備を促進するための施策について検討する。

 

(2) 都心地域等における住宅供給の促進

都心地域等における住宅供給を促進するためには、高地価を顕在化させない定期借地権等の手法を有効に活用し、用地コストを抑制することが有効であることから、市民の目にも効果が見えやすい定期借地権を活用した住宅供給のモデル事業の実施に努める。
また、都心地域等における居住者の利便性の向上や高齢者の居住の安定等を図る観点から、住宅と保育所や高齢者福祉施設等の公共施設や商業・業務施設等との合築や連携を図った整備に努める。
公共賃貸住宅等の供給に当たっては、都心地域等における供給を重点的に誘導することを目指す。

 

(3) 住宅団地の再整備の促進

マンションや公共賃貸住宅の中高層の住宅団地の中には、老朽化が進み、安全性や快適性の確保の観点から、大規模な修繕や建替え等を検討しているものも存在しており、それらの適切な誘導に努める。
この場合において、公共公益施設とのバランスが確保された建替えを誘導するため、公共公益施設の容量や今後の整備計画のほか、それらを踏まえた建替計画のガイドライン等をとりまとめた「建替計画指導指針」の策定・周知に努める。
マンションの建替えに際しては、高齢者世帯等が過大な負担を伴わずに住み続けられることが大きな課題であり、そのための資金調達の方法等について検討を行う。

 

(4) 新市街地における良好な住宅地開発の促進

今後、住宅の建設が行われる新市街地においては、道路等の基盤施設整備と連携しつつ、計画的な住宅地開発を促進するとともに、そこで供給される住宅については、バリアフリー化等の高齢社会への対応や省エネルギー等の環境への配慮等がなされた良質なものとなるよう誘導に努める。

 

(5) 都市基盤整備公団と連携した先導的な市街地の整備改善

市街地の整備や改善において、まちづくりに関して豊富な実績と蓄積のある都市基盤整備公団と連携して、先導的な市街地の整備改善に取り組む。

 

(6) 住民による自主的なまちづくり活動への支援及び連携

地域特性に応じた住宅の供給・整備を進めていくため、建築協定、緑地協定、地区計画等の活用を促進することなどにより、まちづくりのルールの明確化に努める。
また、住民等による自主的なまちづくり活動やまちづくりのルールの明確化に向けた活動等に対して、NPO等との連携を図るとともに、その活動を支援しつつ、情報の提供や相談を受け付ける体制の整備を図る。

 

5 環境との共生

 

(1) 住宅における省資源化の促進

環境問題が深刻化する中で、住宅における省資源化を促進するため、高い耐久性を有し、居住者のニーズに応じた改変が可能なスケルトン住宅等の長期耐用住宅の普及を促進する。
また、廃棄物の発生を抑制するため、情報提供等を通じて、住宅の長寿命化やリサイクルの推進等に努める。

 

(2) 住宅の省エネルギー化等の促進

住宅における省エネルギー化を進めるため、「次世代省エネルギー基準」の普及を促進するとともに、利子補給制度における優遇措置等を通じて、「次世代省エネルギー基準」に適合する住宅の供給や改善を促進する。
また、自然エネルギー等の活用を促進する観点から、太陽光発電設備の設置等を促進するため、既存の助成制度等に関する情報提供等に努めるとともに、独自の支援策の実施に取り組む。

 

(3) 住宅地における緑化等の促進

「千葉市緑と水辺の基本計画」に基づき、住宅地の緑化を進めるため、生け垣化や屋上緑化等を促進する。特に、公庫融資の割増しを受けることができる「地方公共団体施策住宅特別加算制度」を活用して、生け垣化や屋上緑化等の住環境の向上に寄与する住宅整備を誘導する。
また、雨水の地下浸透や貯留を促進するため、雨水浸透桝や雨水貯留槽の設置等に対する支援を行う。

 

(4) 公共賃貸住宅等における環境共生化の推進
公共賃貸住宅等においては、先導的なモデル事業として、太陽光や太陽熱等の自然エネルギーの活用、雨水の地下浸透・貯留や緑化の推進等の自然環境との調和に配慮した環境共生化を推進する。

 

6 住まいに関する情報の提供

 

(1) 情報提供体制の充実

住まいに関する総合的な情報提供の場として、「住宅関連情報提供コーナー(すまいアップコーナー)」を設置しているが、当コーナーにおいて、提供できる情報の幅を広げ、内容を充実させるため、国や県等の公的機関、設計者や事業者等から構成される関係団体、NPO等との連携の強化に努める。
また、公的機関以外が発信する情報の提供に当たっては、その内容を審査・評価するしくみを整備する。

 

(2) 情報の質と量の充実

市民が、多様な公共賃貸住宅の選択肢の中から、入居ニーズに合致した住宅を選択できるようにするため、他の地方公共団体や公団、公社等と連携して、公共賃貸住宅の募集情報等の提供に努める。
良質な住宅ストックの形成を促進するため、バリアフリー化や環境との共生、住宅の情報化に関する情報や、既存の住宅ストックの有効活用を図る観点から、リフォームや住替えに関する情報の充実に努める。
また、市民がバリアフリー化された住宅を体験できるよう、モデルルームの整備に取り組む。

 

(3) 相談受付体制の充実

住まいに関する相談は、専門的かつ幅広い分野にわたるものが多いことから、対応マニュアルの整備等を図るとともに、設計者や事業者等の関係団体やNPO等との連携を強化することにより、相談機能の充実を図る。
また、「住宅関連情報提供コーナー」を市民にとって利用しやすいものとするため、対応可能な相談内容等を具体的に明示するとともに、相談を受け付ける日時の拡充に努める。

 

第4 「新・千葉市住宅マスタープラン」における当面の重点施策

「新・千葉市住宅マスタープラン」において、当面の重点施策として、次の項目を提言する。これらの施策は、第3の施策展開の基本的方向において位置付けたもののうち、早急に実施・対応が必要なものである。住宅施策に求められる課題は、急速に進展する少子・高齢社会、老朽化の進むマンション、地球環境保全等、緊急でかつ継続的な対応が肝要である。具体的な施策として、実施計画に反映させ、着実な実現を図るべきである。

 

<少子・高齢社会への対応>

 

1.シルバーハウジングの供給

高齢者の居住の安定を図るため、生活援助員(ライフサポートアドバイザー)による福祉サービスを伴った公営住宅(シルバーハウジング)の供給に努める。

 

2.高齢者向け優良賃貸住宅の供給

民間事業者等との連携により、緊急時対応サービス等を備えた高齢者向け優良賃貸住宅の供給に努める。

 

3.高齢期の居住・住替えを支援するしくみの整備

高齢者等の民間賃貸住宅への入居が困難な状況を考慮して、入居保証人として、市が支援する体制づくりに取り組む。また、高齢期にふさわしいバリアフリー化された住宅に容易に住替えられるよう、住替えを支援する住宅情報の提供を行う。その際、住替え前の住宅を、定期借家制度等を利用し、若年世帯向け住宅等として有効活用できるような情報提供も行っていく。

 

4.若年世帯の居住を支援するしくみの整備

少子化対策として、子育て世帯が必要とする住宅情報の提供を行っていくとともに、特定優良賃貸住宅等の中で、新婚・子育て世帯向け枠を設定し、家賃助成制度を導入する。

 

<住宅ストックの維持管理及び更新>

 

5.耐震診断及び耐震改修の促進

安全性向上のために、耐震診断・改修の相談業務に取り組むとともに、利子補給制度等を拡充し支援することにより、耐震診断及び耐震改修を促進する。

 

6.マンションの維持管理及び建替えに対する支援

マンションにおいては、居住者間の合意形成の難しさ、建物管理上の技術的判断の困難さ等、維持管理上の課題が多いことから、これらの課題に対して、管理組合が適切に活動できるよう、情報提供や相談窓口の拡充を図る。また、建替え時においては、優良建築物等整備事業、総合設計制度等の活用や、高齢者向け優良賃貸住宅、福祉施設等の導入を検討する。

 

7.市営住宅の維持管理及び更新

「公営住宅ストック総合活用計画」を策定し、少子・高齢社会に向けた計画的・効果的な改善及び更新を行う。なお、計画策定に当たっては、ストックの維持管理・改善に主眼を移すとともに、更新時には、福祉施設等の併設も視野に入れた計画とする。

 

<良質で多様な住宅の供給>

 

8.特定優良賃貸住宅の供給

若年世帯向け住宅、高齢者世帯向け住宅等、多様な世帯が入居可能な住宅として、都心地域等で再開発事業等と連携し、供給に努める。

 

9.利子補給制度の拡充

これまでの持家取得や増改築に対する利子補給に加え、共用部・住戸内部のバリアフリー化等、良質な民間賃貸住宅整備を促進するため、制度を拡充し支援する。

 

10.住宅性能表示制度の普及

住宅性能表示制度の普及に努め、情報提供等、関係機関との連携をとりながら、良質な住宅の供給を促進する。

 

<まちづくりとの連携>

 

11.定期借地権を活用した住宅の供給

定期借地権を活用した住宅の情報提供に努めるとともに、市住宅供給公社の自主事業として定借バンク等の仲介業務を行う。
また、まちづくりと連携した再開発事業、区画整理事業において、定期借地権を利用した戸建て住宅、スケルトン型定期借地権マンションの供給を検討する。

 

12.狭隘な道路の整備促進

狭隘な道路の実態を把握するとともに、セットバック時の塀・生け垣の移設等に対する助成等の手法を検討し、整備を促進する。

 

<環境との共生>

 

13.太陽光発電助成制度等の導入

「千葉市地域新エネルギービジョン」に基づき、太陽光発電助成制度等を導入し、普及に努める。

 

14.地方公共団体施策住宅特別加算制度の活用

住宅金融公庫の「地方公共団体施策住宅特別加算制度」の活用により、住宅地の緑化と良好な景観形成、雨水の再利用、浸透施設の整備を図る。

 

15.環境に配慮した公共賃貸住宅の整備

地球環境に配慮した先導的な事例として、モデル住宅の整備を検討するとともに、公共賃貸住宅の改善・更新にあたり、リサイクル材の活用に努め、普及を図る。

 

<住まいに関する情報の提供>

 

16.バリアフリー住宅のモデルルーム設置

市民がバリアフリーの必要性を実感でき、自宅の改造や新築・購入時の参考となるように、戸建て住宅・集合住宅に対応し、在宅介護等にも配慮した、モデルルームや体験コーナーを設置する。

 

17.住宅相談窓口の拡充

現在のすまいアップコーナー、及び増改築相談窓口を拡充し、公共賃貸住宅の空き家情報の提供、マンションに関する総合的な相談業務も行う。

 

18.千葉市優秀建築賞の活用

住宅の内外のバリアフリー化や、地球環境に配慮した優れた実例を、リフォーム等も含め、表彰し、普及に努める。

 

19.住宅事情に関する情報の提供

市民の住宅施策に対する要望に的確に応えるため、千葉市の住宅・宅地の状況、市民の住宅・住環境に対する意識や、住まいかたの実態を定期的に調査・分析し、これらを「住宅データ集」やインターネットホームページで公表していく。

 

第5 「新・千葉市住宅マスタープラン」における基本目標の考え方

 

現行の「千葉市住宅マスタープラン」は、基本理念を「一人ひとりのゆたかさをひろげる住まいづくり」とするとともに、基本目標を「ライフサイクルに応じたゆとりある住まいづくり」及び「地域特性に応じた魅力ある住まいづくり」としている。
この基本理念及び基本目標が掲げられた住宅マスタープラン策定時の社会状況を振り返ると、いわゆるバブル経済が崩壊し、経済は右肩上がりから安定成長へと移行しつつあったものの、住宅政策においては、未だに公共賃貸住宅をはじめとした住宅供給の量的な拡大が求められている状況にあった。

 

しかし、今後は、成長社会から成熟社会への移行という大きな変革期の中で、長期化する景気の停滞、雇用等の社会システムの見直し、急速な少子・高齢化の進行、環境問題の深刻化などの様々な不安に対する「安心」が求められている。したがって、住宅政策においても、供給量の拡大や成長を志向することから、世代を通じて、安心して住み続けられるということに重点を移すことが望ましい。
そこで、本審議会としては、『新・住宅マスタープラン』における千葉市の住宅政策の基本目標として、

 

『安心して住み続けられる住まいづくり』

 

を掲げることを提言する。

 

第6 「新・千葉市住宅マスタープラン」における施策の実施に向けて

 

「新・千葉市住宅マスタープラン」は、今後の千葉市における住宅政策の基本方針を示すものであり、そこに示された施策は、国・県・都市基盤整備公団及び福祉・都市計画部局等と緊密な連携を図りつつ、着実に実現されていくものでなければならない。
なお、各施策の実現に向けて、市民、関係団体、学識経験者等から構成される検討の場を設け、幅広い観点からの検討を行うとともに、施策が実施に移される過程や内容について、市民にも分かるように、明示していく必要がある。

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都市局建築部住宅政策課

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