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更新日:2026年5月6日

加曽利のヒトM’sRoom

ここでは学芸員が最近学んだことを紹介します。

縄文時代前期の土器文様にみる東西日本の地域間交流とヒト・モノの動きー諸磯b式期を中心に

(要旨)
縄文土器は地域差・年代差がありますが、同一時期の縄文土器は多少離れた地域の在地土器同士であっても、似ていることがしばしばあり、それゆえ、縄文土器研究者は初めて見る縄文土器に対しても、おおそよ年代の推測がつけられます。こうした類縁性をもたらしたものは何か。縄文時代前期後半(後葉)の諸磯(もろいそ)b式土器併行の時期を例に挙げ、調べた結果、その背景に、活発な土器の流通(搬入・搬出)とその模倣製作および製作者の移動などによる影響関係、すなわち地域間交流があったと考えられました。

はじめにー対象とする時期と地域

ここで取り上げるのは縄文時代前期後葉に当たります。東日本には東北地方南半の大木(だいき)3・4式、関東・中部・北陸地方東部には諸磯b式とそれから分岐した浮島式(うきしましき・関東地方東部)、刈羽式(かりわしき・北陸地方東部)、西日本には近畿・東海・北陸地方西部に北白川下層(きたしらかわかそう)IIc式土器が分布します。それらの土器型式を見ると、西日本の土器では器厚が薄いなどの違いはありますが、竹管文(半截竹管文:はんさいちっかんもん)と隆線文により文様が描かれるという類似性が存在します。また隣接地方の土器がしばしば搬入品として出土します。型式間に見られる影響関係を分析し、土器型式の類似性をもたらした背景を考えてみます。

文様要素の伝達と現状分析

土器の(広義の)文様は、「文様要素(文様を描出する要素)、「(狭義の)文様(描かれるモチーフ)」に分けられ、文様は土器の器形などの制約を受け、横位帯状の「文様帯」をなします。ここでは(広義の)文様のうち、前期土器型式に見られる3大文様要素ー沈線文・爪形文(両者は半截竹管文)・隆線文の時期別存在状況を表1~3に示し、そこから導かれる影響関係の方向を青矢印で示してみます。
【3大文様要素】F1図1_A:平行沈線文(渦巻文を描く)_B:爪形文(蕨手文を描く)_C:隆線文(浮線文_渦巻文を描く)

・沈線文:東日本の土器型式に連綿と存在します。西日本の沈線文は諸磯b式の浅鉢の文様を模倣したものです。(表1)T1
*濃い色は主体文様、薄い色は副次的文様であることを示す。
表1沈線文の存在状況

・爪形文:諸磯b式古段階までは東西日本に存在します。東北地方の大木3式の爪形文は関東地方の影響で施文されるようになります。諸磯b式中段階以降、西日本では消滅します。(表2)
T2表2爪形文の存在状況

・隆線文:東北の大木3式から関東東部の土器群を経て関東西部等の諸磯a式の口縁部に部分採用されます。その土器が西日本に搬入され、器面全体に描かれる北白川下IIc式・蜆ヶ森I式となると、関東西部や北陸東部に逆搬入され諸磯b式や刈羽式の隆線となります(振子状影響)。(表3)
T3
表3隆線文の存在状況

考察:文様伝達の背景

文様・文様帯も加味して、土器型式間の影響関係を見ると、影響が1項目にしか及んでいない弱い影響(表4のア等)から、多項目に及んでいる強い影響(同ス)まであります。

T4
表4縄文時代前期後葉土器型式間の主要な影響例

地域分布土器型式の影響が入ってくる場合、他型式土器が流入する場合(流入異型式土器)と、他型式の影響が在地土器に浸透する場合がありますが、上記の諸例は後者です。従来無かった特徴が在地土器に部分的に加わるので、多くは異系統折衷土器を生むことになります。しかし稀に、他型式の特徴を多く持つ土器が在地型式内に出現する例(図2ー2)もあり、これを筆者は異系統貫入土器と呼んでいます(表5)。

T5表5異系統土器・流入異型式土器の分類

F2

図2近畿地方の北白川下層式土器(左)と関東地方の異系統貫入土器(右)表4のサの事例

異系統折衷土器は在地集団内の製作者が搬入された異型式土器等を部分模倣した土器(図3-7)、異系統貫入土器は他地出身の異型式製作者が在地集団集落に移動して製作した土器と考えられます(同17)。
これらは更に模倣が繰り返される場合があり(同8・9・18・19)、影響は在地土器型式に浸透します。影響は可変的な文様要素、文様に現れます。
F3
図3異系統土器・流入異型式土器成立のモデル

結論

こうしたモノ(流入土器)・ヒト(製作者)の動きと模倣製作が縄文時代前期後葉、各地に存在した土器型式の類縁性を生んだと考えられます。

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