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更新日:2023年1月6日
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生産者による出張授業は、地産地消の取り組みとして、「食」と「農」に対する理解と関心を深めるために平成18年度より実施しています。 ここでは、過去の出張授業で使用した資料を再編集して紹介させていただきます。 |
スイカはつる性のウリ科の植物です。カボチャやキュウリなどと同じ系統なので、野菜扱いされる場合と、甘さからくる食べ方から果物扱いの場合があります。育てている段階を考慮する園芸分野では野菜、食べることをメインで考える小売流通や栄養学の分野では果物扱いされています。果実の大きさにより大玉や小玉と呼ばれたり、果肉の色が赤、黄色など様々な種類があります。 |
千葉県では干潟地域や砂地地域で古くからスイカが栽培され、千葉市では大正時代から幕張や誉田が産地でした。その当時、奈良県の「大和西瓜」にブランドがあり、昭和の初めに八街市に奈良県から移住した人が「大和西瓜」を育て始めました。しかし台地の環境に合わなかったため、台地に適した「都1号」という品種を千葉県が育成しました。この「都西瓜」が東京市場でヒットし、千葉市を含めた北総台地の多くでスイカが栽培されるようになりました。現在千葉市では、若葉区、緑区を中心に栽培されています。
スイカの果肉に多く含まれるカリウムは、疲労回復や利尿作用があるといわれています。また、赤色の成分であるカロテンやリコピンも多く含まれています。これらは免疫機能や老化予防などに効果的といわれています。水分も多く含んでいて、暑い夏にはぴったりな食べ物です。
スイカにもいろいろな種類があります。農家は、タネをまく時期や収穫時期、畑の環境に合わせて選んでいます。もちろんそれぞれに味や食感に違いがあります。【写真1】を見るとスイカのタネと並んで、ユウガオのタネもあります。実はスイカ作りにはこのユウガオのタネが活躍してきます。 |
【写真1】スイカのタネ |
スイカはいきなり畑にタネをまかずに、苗に育ててから植え替えます。【写真2-1】のように苗を育てる土の入った入れ物へタネをまきます。スイカのタネをまく1週間ほど前にユウガオのタネもまきます。 1週間ほどでスイカの芽が出てきます。 |
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【写真2-1】タネまきの様子 |
【写真2-2】タネまき1週間後 |
スイカとユウガオは同じウリ科で、2つを1つの苗にしてしまう「接ぎ木」をします。スイカは土から伝染する“つる割れ病”という病気に大変弱いです。そこでつる割れ病に強いユウガオを土台にすることで病気を防ぎます。 【写真3-1】接ぎ木の様子 |
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まずユウガオの苗を根元から切り、杯軸という葉の先の方を切り取ります。 その後、手で新芽を取り除きます。ユウガオは根を1度切り落とすことで、根をそれまでの約3倍生やすようになります。 |
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ユウガオの芽を取り除いた部分に、竹べらで穴をあけます。 |
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スイカの苗の茎を、カッターで斜めに切り落として、先ほどユウガオに開けた穴にさします。 |
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これをポットに植えて接ぎ木は完成です。 |
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【写真3-2】タネまき |
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1週間ほどで【写真3-2】のように生長します。これから40日ほど育てた後、畑に植え付けていきます。接ぎ木をしてから植え付けできる大きさまで育つ苗は、10本中8本程度です。このようにすることで、病気にかかってしまうよりも効率的に育てることができます。 | |
【写真3-3】完成した苗 |
スイカを大きく元気に育てるため、収穫する畑の準備をします。肥料をまいた後、土と肥料が混ざる様に耕運機でよくかき混ぜます。かき混ぜて土を軟らかくすることで、根が伸びやすくなります。このように土を軟らかく、栄養たっぷりにすることを「畑づくり」といいます。スイカは大きくなるために土からたくさんの栄養を吸収します。大きくておいしいスイカを作るために、畑づくりは非常に大事な作業になります。 |
【写真4】畑づくりの様子 |
スイカは寒さに非常に弱いです。寒さからスイカを守り、保温するためにビニールで囲んでいきます。まずは【写真5-1】のように畑にビニールを敷きます。こうすることにより土が乾燥しにくくなり、保温効果もあります。さらに半円状の枠を取り付けていきます。 |
【写真5-1】マルチを敷いている様子 |
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【写真5-2】植え付け |
【写真5-3】トンネル |
【写真6】は、植え付けしてから約50日です。このように花が咲く前にも、細かな手入れが必要です。1つの苗から芽が4本伸びるように、多いときは芽を取ってしまいます。実になったときのことを考えて、雌花が敷いているビニールの真ん中になる様に伸びた芽を戻す作業もしています。 |
【写真6】スイカの花 |
スイカは自分自身で受粉することができません。【写真7-1】のように手やミツバチなどを使って助けてあげます。雄花の花粉を雌花の先にある柱頭につけるのを助けることを“交配”といいます。この作業は必ず午前中に行わなければなりません。午後では、柱頭に花粉が付かなくなってしまいます。 受粉すると【写真7-3】のように実が膨らみ始めます。受粉から5日後で、だいたいピンポン玉くらいのおおきさになります。初めに1つの苗から4つの芽を伸ばしていましたが、それぞれの芽に1つ実をつけておきます。その後、実が野球ボール程度に大きくなったところで、栄養を集中させる為に、元気で形のいい実を残して、悪い実は取ってしまいます。これを“摘果”といいます。 |
【写真7-1】交配の様子 |
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【写真7-2】交配の様子 |
【写真7-3】受粉後5日程度 |
受粉から20日~25日ほどで【写真8-1】のように30cm程度に大きくなります。スイカが大きくなると、地面についている面積も大きくなってきます。スイカの地面について日光が当たらない部分には、きれいな緑色になりません。そこで、“スイカマット”をスイカの下に敷きます。スイカマットは接地面積が少なくなり、底になっている部分にも光が当たるようになっています。これにより、色むらがなくなり、地面に触れているストレスや病気の予防になります。昔は対策として、スイカの位置を手で動かす“球返し”という作業をしていましたが、スイカマットを使うようになってからは、球返しをしなくてよくなりました。 |
【写真8-1】受粉後20日程度 |
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【写真8-2】収穫前の検査の様子 |
出荷をしていいか判断するために、生産者と農協職員が集まります。みんなでスイカを持ち寄って“今年のでき”を確認します。【写真8-2】のように甘さを図る糖度計を使い、甘さを調べたり、大きさの確認をします。ここで今年の出荷の基準を決めて、いよいよ収穫となります。
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6月末あたりから収穫となります。【写真8-3】のようにひとつひとつ手作業で収穫になります。 |
【写真8-3】収穫 |
各農家が収穫したスイカは“集荷場”へ集められます。【写真9-1】のようにたくさん並べられます。【写真9-2】は、スイカをたたいて中身に空洞などがないかを音で聴き分けています。品質のチェックがされたスイカは、【写真9-3】のように大きさごとに箱に詰められていきます。箱に詰められたスイカは市場へ運ぶためにトラックに詰め込まれていきます。 | ||
【写真9-1】集荷場のスイカ |
【写真9-2】たたいて確認 |
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【写真9-3】箱詰め |
【写真9-4】出荷 |
農家はたくさんの仕事があるので、遠い市場まで商品を持っていくのはとても大変です。そこで農協は農家と市場の間に入って集荷場に集められた野菜たちを鮮度の維持しながら市場へ運ぶという仕事をしています。野菜は形や大きさなどで分けられた「等級」によって市場で売られる値段が変わっています。その等級の確認も農協が行っています。他にも農家が使うタネや肥料、トンネルを作る棒や網、トラクターなどの農業に必要な道具の販売なども行っています。 |
【写真10】農協の役割 |
市場に運ばれた野菜は市場で働く卸売業者が納品先(八百屋や仲卸売業者)ごとに仕分けます。仕分けられた野菜を八百屋や仲卸売業者が学校やスーパーに運んで行きます。学校では調理師さんが給食を作ってくれて、みんなの口においしい野菜が届きます。 | |
【写真11-1】千葉市地方卸売市場 |
【写真11-2】市場の中の様子 |
このように畑で作られた野菜がみんなの口に届くまでには、農家などたくさんの人の力と努力が関わっています。そういった背景もたまに思い出しながら、給食をおいしく残さず食べてください。
資料作成:千葉市経済農政局農政部農政課
協力:JA千葉みらい 大広出荷組合
参考文献:「千葉県野菜園芸発達史」 昭和60年千葉県発行
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